業務フローとは
業務フローとは、作業の流れを示す図のことを指します。業務の流れを可視化して、その作業に関わる関係者に、情報を共有するために作成します。特に製造業では、認識合わせをすることができます。製造業の業務は流れが複雑なものが多く、特別なノウハウを含んでいます。そこで、ほとんどの製造業では業務フローを作成して情報の共有化をおこなっています。
ただし、監査のために作成しているけれど、他の目的には使いこなせていない場合もあるようです。
業務フローに記載される内容は?
業務フローに記載される内容は、一連の業務の流れです。具体的には、以下のような項目が記載されます。
- 開始と終了
- 各工程の名称と手順
- 作業条件や数量
- 各業務の担当
- 各作業の関係
- 工程検査の内容と判断基準
- 判断の必要なステップと責任体制
フローチャートと業務フローの違い
フローチャートと業務フローは、両方ともプロセスや手順を視覚化するために使用されますが、使用目的が違います。
フローチャートは、プロセスの各ステップや決定の流れを可視化するツールです。情報処理やシステム開発、プログラミングなどの分野で広く使用され、四角やひし形、矢印などを使用してプロセスの流れを表現します。コンピュータープログラミングやシステムの設計、ソフトウェアの開発など、技術的な分野で使用され、詳細で正確な流れを表現するために様々な記号やルールがあります。
一方、業務フローは、業務フローチャートの名称が短縮された用語で、フローチャートの仲間です。業務の流れを表現するために使用され、ひとつひとつのステップやタスクだけでなく、関連する人や部門、判断のポイントなども示します。ビジネスや組織の業務プロセスを分かりやすく整理するのに使われますが、フローチャートよりも記号やツール、凡例を使い、柔軟に作成します。特に製造業では、その傾向が強いようです。
ガントチャートと業務フローの違い
業務フローとガントチャートは、ともに作業の開始から終了までを図式したものですが、何を軸とするのかと用途が違います。
ガントチャートは時間軸
ガントチャートは「時間」を軸として、作業内容を帯状に図式化し共有化するツールです。主に工事や定期点検など納期を設定して、進捗の管理が必要な場合に作成されます。工程やタスクの開始日と終了日、関係性、進捗状況などを視覚的に表現します。ガントチャートのメリットは、プロジェクトの全体像や細部を一目で把握できることや、リスクや遅延の原因を早期に発見できることなどがあります。
ただし、ガントチャートには作業の具体的な手順は含まれないので、ガントチャートは作業手順がわりに使えません。
業務フローは流れ軸
これに対し、業務フローは業務の流れやプロセスの作業手順を図式化したもので「作業の流れ」が軸となります。作業手順だけでなく、工程やタスクの関係性、進捗状況などを視覚的に表現しています。業務フローを作りこめば作業手順としても使用できます。
業務フロー作成6つのメリット
業務フローは情報の共有化が可能ですが、そのメリットは多岐にわたります。そのメリットを考慮すれば、より役に立つ業務フローが作成できるでしょう。ここでは、製造業で作成する業務フローのメリットを6つ解説します。
1. 複雑な業務の流れを共有しやすくする
製造業の業務は流れが複雑なものが多く、特別なノウハウを含んでいます。しかし、各作業員が、おなじ製品を作らなければなりません。
ここで、業務フローが役に立ちます。客観性をもって工程の流れが明記されていれば、一定の技術と知識さえあれば、誰もが同じように製品を作ることができます。
2. ミスを少なくし効率化する
業務フローには、ミス防止の効果もあります。フローにしたがって作業を実施すれば、必要な工程を飛ばすなどのリスクは少なくなります。間違いが少なくなれば、不良品も少なくなり、利益の向上につながります。
3. 品質を向上させる
業務フローを詳細に作成し、工程の作業内容を安定させれば、狙い通りの品質で製品を作りやすくなります。これは顧客満足や苦情件数の低下にもつながり、企業イメージをアップさせます。
4. 安全作業が実施しやすくなる
業務フローに安全面での注意点を記載し、チェックしながら作業すれば、作業が安全に進めやすくなるでしょう。業務フローは労働災害防止にも役立ちます。
5. 業務の改善を進めやすくする
わかりやすい業務フローがあれば、工程が可視化でき、改善ポイントを明確にしやすくなります。つまり、問題点もはっきりするのです。これをもとに業務の改善をすすめれば、一層の効率アップが望めるでしょう。
6. 教育しやすくする
業務フローができていれば、教育する側もされる側も、ポイントをおさえやすくなり便利です。業務フローは作業の属人化を防ぐためにも、役に立ちます。
業務フローを作成するときのポイント
作成前にデータを揃える
業務フローは、作業手順にもの作成する前に、必要なポイントを確認しましょう。
これらを整理してから始めれば、作成時間を短縮できます。
- 業務の開始点と終了点
- 使用する記号や用語
- フローを構成する工程の5W1H
- いつ:どのタイミングの工程なのかを明確にする
- どこで:どの工程が実施するのかを明確にする
- 誰が:業務の担当者や関係者を整理する
- 何を:どの作業なのかを明確にする
- なぜ:なぜその工程を可視化するのかをはっきりさせる
- どうやって:業務の内容や手順を整理する
業務フロー作成に使用する記号や用語はJISがおすすめ
業務フローはフローチャートの一種ですから、フローチャートのJIS規格であるJIS X 0121-1986に従うと、意味がわかりやすいでしょう。公的規格にしたがっておくと、記号や線の意味が統一されるため、読みやすく、担当者が変わっても、間違うリスクが少なくなります。
また、新しい製造フローを作るときにも、混乱せず便利です。
ただし、業務フローはフローチャートに比べ、自由度が高いので基本だけ押さえると、やりやすいでしょう。
フローチャートの基本は、以下のようになります。
- 左から右へ流れるように配置する
- 上から下へ流れるように配置する
- 逆行しなければならないときは、矢印を他の線と重ならないようにひく
- 図と図の間には、間隔をあける
- 適切な図記号を使う
例:判断→ひし形、開始/終了→角を丸くした長方形、作業→長方形
業務フロー作成のデメリット
業務フロー作成には、デメリットもあります。製造業でおきやすいデメリットを3つあげて解説します。
1. 時間やコストがかかる
業務フローは、複数の人が使うものですから、一定のルールを守らなければなりません。工程を横断して作成する場合などは、確認作業が煩雑になるでしょう。また、なにもないところから作成する場合には、図の作成から始めなければならず、時間がかかります。
2. 業務フローの変更や更新が頻繁に必要になる
業務フローは、一度作成して終わりではありません。作業内容の変更にあわせて更新し、最新の状態にしておく必要があります。更新時間をかけたり、承認が複雑だったりすると、業務フローを作成するだけでも、労力がかかってしまうでしょう。また、更新作業が頻繁になると、どの業務フローが最新版なのかを把握し、すべての工程で同じフローが使われるようにする必要があります。
3. 機密情報が持ち出しやすくなる
業務フローは、企業の機密情報のかたまりです。情報の持ち出しには注意を払う必要があります。
業務フロー作成のデメリットを軽減するシステム化とは?
業務フロー作成にシステムを取り入れると、デメリットが軽減しやすくなります。いくつか例をあげましょう。
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時短
業務フロー作成システムには、基本的な図形が用意されているので、最初から図形を書き始めるより、ずっと時短になります。
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更新・周知
クラウド型のシステムであれば、業務フローを各工程で作りこむことができます。そのため、確認に各工程に出向くなどの煩雑な作業は必要ありません。クラウド上に最新版のみ置いてあれば、版管理も必要ありません。
頻繁な更新作業も、工程ごとページごとに設定しておくと、把握しやすくなるでしょう。
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セキュリティ
クラウド上にデータがあれば、持ち出すことは不可能です。クラウド型のシステムはセキュリティについても厳格で、USBにいれて持ち運んでいるより、ずっとセキュリティ面でも向上するでしょう。
業務フローのシステム化Q&A
業務フローをシステム化するときに大切なのが主体性です。業者任せにせず、なにをどのようにシステム化したいのか作成目的を明確にしましょう。ここからは、システム化のとき迷いやすい状況とおすすめの方法をご紹介します。
システム担当者がおらずトラブル対応が不安
クラウド型のシステムを選択し、システムのメンテナンスやアップデートは業者側に任せましょう。セキュリティ対策も、即座に実施できるので安心です。
業務フローを作成できる専門性のある人材がいない
業務フローを細かく分けて、それぞれ分担し業務フローを作成する方法がおすすめです。クラウド型のシステムなら、どの端末からもデータにアクセスでき、同じデータを同時に編集できるので複数作業がしやすいでしょう。
業務フローを作るとセキュリティ面で不安がある
USBなど、持ち運べるデータだと紛失のリスクがついて回ります。データ保管はクラウド上にするというルールを設けて、データの持ち出しを防ぎましょう。
業務フローを作ると、多くのメリットがあります。ぜひ、業務フローで作業を可視化して、効率的な職場を目指しましょう。
業務フロー作成はメリット大、デメリットはシステム化で対応を
業務フロー作成は製造業にとって大きなメリットがあります。システム化すればデメリットが小さくなり、より使いやすくなるでしょう。業務フローのシステム化では、クラウド型のシステムがより使いやすくおすすめです。
製造フロー作成のシステム化におすすめしたいのが、クラウド型生産管理システム「鉄人くん」です。自社にあったシステム化で、見せかけでなく、役に立つ製造フローを作成しましょう。業務フロー整備の際には、鉄人くんも検討のひとつに加えてくださいね。
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