製造業にとって、在庫管理は非常に重要な業務です。在庫管理が杜撰になると、企業経営に深刻なダメージを与える可能性があるため、紙の管理表を使った人手による管理では厳しいでしょう。そのため、多くの会社が在庫管理ソフトを導入しているのが現状です。
しかし、在庫管理ソフトの導入には初期費用がかかります。また、毎月のランニングも発生するため、できれば無料で使えるものはないのかと思われる方も多いでしょう。
そんな方におすすめしたいのが無料の在庫管理ソフトです。今回は、最新のフリー在庫管理ソフトを比較・紹介し、利用上の注意点についても紹介します。
無料の在庫管理ソフトの特徴
無料の在庫管理ソフトとして挙げられるのが、エクセルシートとクラウド・アプリ型在庫管理ソフトの無料プランです。それぞれの特徴を解説します。
オープンソース開発のエクセルシート
インターネット上には、オープンソース開発のエクセル(Excel)のシートがたくさんありますので、在庫管理ソフトとして利用することができます。なお「オープンソース」とは、一般公開され無償利用できるソフトやプログラムのことです。
入出庫に関するチェックリストや在庫管理シートのテンプレートを活用することで、無料で在庫管理ソフトが利用できます。ただし、あくまでもテンプレートであるため、実際に現場で利用する際には、自社の業務フローや商材に合わせたカスタマイズが必要です。そのため、場合によっては大幅な改修が必要なケースもあるので、いくつかのテンプレートをダウンロードして比較検討してから導入を決めるべきでしょう。
エクセルということで、マクロや関数、ピボットなどを駆使すれば、立派な在庫管理ソフトとして利用できます。パソコンを使うほとんどの方がエクセルを利用することもあり、UIやUXにもこなれているため現場で利用しやすい点がメリットです。
ただし、エクセルはあくまでも表計算ソフトであり在庫管理ソフトやデータベースソフトではありません。よって、入力できるデータ数や管理できる商品数には限界があります。また、エクセルは同時にユーザーがアクセスして編集がおこなえないため、他のユーザーが作業している間利用できない点がデメリットです。
そのため、発注が入って在庫を確認しようとしたらエクセルが開かず、開いてみたときには在庫がなかったというケースも考えられるでしょう。さらに、エクセルのシートをカスタマイズしたスタッフが退社してしまうと、不具合やメンテナンス対応が困難になります。
したがって、オープンソース開発のエクセルシートで在庫管理できるのは、商品数が少ない企業や、従業員が数名程度の企業などに限られてくるでしょう。
クラウド型の無料プラン
在庫管理ソフトは、多くのベンダーからさまざまなサービスが提供されています。また、在庫管理ソフトは従来のオンプレミス型に代わり、最近はクラウド型が主流です。
クラウド型は自社でサーバーやシステムをすべて準備しなくてはならないオンプレミス型とは異なり、クラウド上(インターネット上)に準備されたシステムを利用する仕組みになっています。そのため、導入が簡単でコストが安い点がメリットです。
さらに、クラウド型の在庫管理ソフトには無料のトライアル期間が準備されていることが多く、気軽にお試しで利用できます。実際に社内で利用してみることで、自社に合った在庫管理ソフトかどうか確認できますので安心です。
クラウド型の在庫管理ソフトを導入することで、社内の在庫データを一元管理できるようになります。また、データは手動入力だけでなく、ハンディターミナルを活用した入力方法でも可能なため、大幅な生産性の向上効果が期待できるでしょう。
また、在韓管理のデータはクラウド上管理されているため、会社の全スタッフがリアルタイムに状況を把握することもできます。よって、前述したエクセルシートのように在庫がないのに発注を受けるような事態も事前に回避できるわけです。
さらに、リアルタイムに在庫状況が可視化されることで、過剰在庫の対応や追加生産などに対する施策実施の判断もスピーディーにおこなえるようになります。経営判断が早くなることで最適な施策を早く打てるようになるため、企業の生産性向上につながりやすくなるでしょう。
無料の在庫管理アプリ
在庫管理用のスマホ・タブレット専用アプリの中には、無料で提供されているものもあります。ただし、すべての機能を開放する場合には、有料版にアップデートする必要があるものも多いため、自社の活用範囲に応じて導入検討しましょう。
スマホやタブレットのカメラからQRコードやバーコードを認識することで、在庫管理用のデータを入力することが可能です。そのため、ハンディターミナルの導入も不要で、コストが安く済む点がメリットだといえるでしょう。
在庫管理アプリもクラウドの在庫管理ソフトと同じように、在庫データの入力や編集ができるだけでなく、カメラで撮影した写真の登録もできます。もちろん、入力した在庫データの閲覧や検索も簡単に実施可能です。
無料の在庫管理アプリは従業員のスマホを利用することも可能なため、BYOD(Bring Your Own Devices)を実施している企業にとっては大きなコストカット効果が期待できます。また、在庫管理に特化したツールを持ち歩く必要もなく、可搬性も抜群です。
無料で使えるおすすめ在庫管理ソフト5選
無料で使える在庫管理ソフトは非常にたくさんあるので「どれにしたらよいのか分からない」という方も多いと思います。そこで、無料で使えるおすすめ在庫管理ソフトを5つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ZAICO
クラウド在庫管理ソフト「ZAICO」は、「100,000人が使うクラウド在庫管理ソフト」というキャッチフレーズの通り、さまざまな業種で利用されている在庫管理ソフトです。無料プランであれば、200件のデータまで保存とデータの登録、検索ができます。
ZAICOはスマホやタブレット、パソコンで利用できますので、ハンディターミナルなど在庫管理用の特別なデバイスを導入する必要はありません。また、クラウド会計ソフト「freee」とシームレスな連携が可能なため、経理業務の効率化につなげやすい点もメリットです。
なお、無料の他にエントリー、スタンダード、シッピングの3プランがあり、それぞれ以下のような機能が利用できるようになります。
プラン名 | 利用料金 | 機能概要 |
無料 | 0円 | ・200件までデータ登録
・データ保存・検索 |
エントリー | 980円/月 | ・データ登録数無制限
・在庫データの詳細検索 ・数量差分入力 ・在庫データへの項目追加 ・入庫・出庫・棚卸スキャン |
スタンダード | 2,980円/月 | ・エントリーの全機能
・発注点管理 ・変更履歴記録機能 ・API機能 ・仕入・納品データエクスポート ・OCR(画像認識)機能 |
シッピング | 9,800円/月 | ・スタンダードの全機能
・発送指示 ・ピッキングリスト・送り状・発送用納品書作成 |
スマート在庫管理 ユビレジ 在庫管理
「ユビレジ 在庫管理」はiPhone・iPad用の在庫管理アプリです。クラウドタイプのユビレジ 在庫管理は、在庫管理に必要な一通りの機能が揃っており、アプリをインストールするだけですぐに利用できますので、スモールビジネスなどにも適しています。
ユビレジ 在庫管理は有料アプリですが、すべての機能が使える1か月の無料トライアルが使用できますので、ぜひ有効活用してみてください。ちなみに、ユビレジ 在庫管理の月額費用は¥4,500ですが、ユビレジ プレミアムプランへの加入が必須となっています。(¥6,900 /月)
なお、ユビレジ在庫管理のおもな機能は以下の通りです。
機能名 | 機能概要 |
リアルタイム在庫確認 | 販売数が自動で在庫数に反映 |
データ自動集計 | 業務内容のデータが自動集計
└原価や粗利、廃棄数などを管理 |
発注データの仕分け | 入力済みの発注データを発注先毎に分類しダウンロード可能
プリントアウトして発注書として利用可能 |
自動発注アラート | 在庫変動の傾向から在庫切れの時期を予見してアラートを出す機能 |
バーコード作成 | プリンターを使ってバーコード作成が可能 |
SASO
「SASO」は無料のオープンソース在庫管理ソフトです。自社サーバーやクラウドサーバー上に在庫管理ソフトを構築できます。基本的な在庫管理に必要な機能に加え、バーコードを活用した数量・棚番管理ができるラベル印刷機能なども利用可能です。
ただし、SASOを利用する場合、データベースを構築しなくてはいけないため、システムの知識が必要になります。テストサイトでトライアルもできますので、自社に導入できるかどうか確認してみると安心でしょう。
なお、SASOの機能概要は以下の通りです。
機能名 | 機能概要 |
商品管理 | ・商品の登録や廃番処理の実施が可能
└商品名や価格、分類、色、サイズをはじめ、容器包装リサイクル法に則った形式で梱包情報を登録 ・商品番号の自動採番 |
分類管理 | ・商品分類の登録が可能
└分類を逆にもできます |
数量管理 | ・商品の棚卸・入出庫
└入出庫履歴がレコードされる |
棚番管理 | ・棚置き処理(バーコード)
・棚番ラベル印刷機能 |
ラベル印刷 | ・商品ラベル出力
└ラベルの寸法を登録 |
LASK
「LASK」は、さまざまな業種に対応したフリーミアム(基本無料)の在庫管理ソフトになります。ソフトをダウンロードしてサーバーにアップロードすれば、すぐに在庫管理が始められるため、スピーディーかつ無料で導入が可能です。
シンプルな設計ですが在庫管理に必要な機能が一通り利用できます。また、Excelなど他のソフトとの連携もできますので、柔軟な使い方ができる点もうれしいところでしょう。
なお、有料版にすることカスタマイズすることができますので、必要に応じて検討してみてもよいでしょう。以下、LASK無料版と有料版の違いです。
プラン名 | 機能概要 |
無料版 | ・在庫状況のリアルタイム管理
・拠点別在庫状況の共有 ・検索・ソート機能 ・Excelや他社帳票作成・請求書作成ソフトとの連携が可能 |
有料版
・初期設定費用:¥10,000~ ・サーバー費用+管理費用(月額): ¥3,000 ~(LASK側サーバーを利用) |
企業ニーズに合わせてカスタマイズ可能
以下はカスタマイズ事例です。 ・項目を追加 ・履歴機能を追加 ・一括入力機能を追加 |
ロジクラ
「ロジクラ」は小売やEC事業に最適なフリーミアムの在庫管理ソフトです。パソコンだけでなくiPhoneでも利用できますので可搬性に優れ、ハンディターミナルなどの在庫管理用デバイスが不要な点がメリットになります。
無料プランではコストを抑えて在庫管理の業務効率化がおこなえますが、有用プランにアップグレードすることで、さらにさまざまな追加機能が使えるようになるので、以下を確認して導入を検討してみてください。なお、無料から有料にアップデートした場合でも、データは引き継がれますので安心です。
プラン名 | 利用料金 | 機能概要 |
無料プラン | 0円 | ・商品登録無制限
・入出荷・在庫管理 ・商品登録数は無制限 ・拠点数は1拠点まで ・出荷件数は300件/月まで |
スタータープラン | ¥ 9,000 /月
導入支援費用: ¥100,000 |
・無料プランと同等の機能
・棚卸 ・ログ機能 |
スタンダードプラン | ¥ 29,000 /月
導入支援費用: ¥100,000 |
・スタータープランと同等機能
・3拠点まで ・出荷件数は1,000件/月まで ・納品書・送り状 ・セット品管理 ・公開API ・他社サービス・ソフトとの連携 |
WMSプラン | ¥ 49,000 /月
導入支援費用: ¥100,000 |
・スタンダードプランと同等の機能
・有効期限管理(追加¥10,000/月) ・ロケーション管理 ・スマホでピッキング ・ABC分析機能 ・拠点間入出荷 |
無料の在庫管理ソフトを使う場合の注意点
無料で使える在庫管理ソフトですが、無料だけに制限されている機能もあるため、自社の課題解決につながるか確認した上で、導入を決める必要があります。
セキュリティが脆弱
無料在庫管理ソフトの中には、セキュリティ対策が万全でないものもあります。その場合は、自社でセキュリティ対策をしなくてはなりません。
例えば、オープンソース開発のエクセルシートを利用する際には、データ漏洩や入力ミス、シートの破損といった社内セキュリティはもちろん、外部からの攻撃に備えたセキュリティ対策を自社ですべて準備する必要があります。また、当然ながらセキュリティ対策を施せる人材が、社内にいることが大前提です。
一方、クラウドベースの在庫管理ソフトであれば、ベンダー側でセキュリティ対策が施されているケースが多いため、比較的安全だといえるでしょう。
機能が乏しい・限定される
無料の在庫管理ソフトは機能が限定されているものがほとんどです。基本的に完全無料の在庫管理ソフトは少なく、フリーミアムなサービスで有料版への導線を作っているケースがほとんどになります。
そのため、自社の課題を解決するために必要な機能を利用するためには、有料版にアップデートしなければならないパターンがほとんどでしょう。また、商品数や拠点数の制限があるものや、トライアル期間しか無料でないという在庫管理ソフトもあります。
したがって、完全無料で在庫管理ソフトを利用できるのは、商品数や拠点数が少ない企業に限定される可能性が高いことを覚えておきましょう。
サポート対応が不十分
無料の在庫管理ソフトは、ベンダー側から充分なサポートを受けられないものも多くあります。特に、オープンソース開発やシェアウェアなどは、基本的にベンダーのサポートは受けられないと思っておいたほうがよいでしょう。
そのため、無料の在庫管理ソフトを導入する場合には、社内にプログラマーやエンジニアといったIT人材がいることが絶対条件になります。社内で確実に運用とメンテナンスができる体制を構築できない場合は、やはり有料版の在庫管理ソフトを利用したほうが安心です。
低コストな有料の在庫管理ソフトも検討しよう
今回は、無料で使えるおすすめ在庫管理ソフトを5つ紹介しました。
もちろんこれ以外にもオープンソース開発のエクセルシートやシェウェアなど、無料のものはたくさんあります。しかし、セキュリティ面や機能面でのデメリットも多いので、可能であれば有料の在庫管理ソフトの利用がおすすめです。
有料といっても、最近はクラウドベースのサービスが増えており、初期費用や毎月の利用料金も非常に安価になっています。また、多くの在庫管理ソフトが無料版や無料トライアル期間を用意していますので、まず無料で試した後、自社に向いていると判断できたら有料版にアップデートするというのもよいでしょう。
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今回紹介した在庫管理ソフトはどれも比較的低コストで導入できますので、有料の在庫管理ソフトの導入の際に参考にしてみてください。