モノとモノを締結するのに使われるねじやボルトは、ねじを回して締め付けていくと、徐々に締め付けの強度が増していき、だんだん固くなっていきます。この特性をグラフに示したものに、トルク曲線があります。
今回は、適正締付トルクの設定をする際に役立つ「トルク曲線」について紹介します。
トルク曲線とは
トルク曲線とは、タッピンねじや小ねじなどを相手部材に締め付けていく様子をグラフで表した際に描かれる曲線のことで、グラフ縦軸にトルク値を、そして、横軸にねじを締め付け経過時間を示しています。
ねじを締め付けていくと、だんだん固くなっていきます。
トルク曲線では、右肩あがりのグラフとなり、ねじ込みに必要なトルク(廻す力)が、それだけ大きくなっていくということになります。
トルク曲線の見方
タッピンねじや小ねじなどのねじ締めトルクを動的に分析して最適な締結条件を選定するために開発された、ねじ締めトルク試験・解析システムのトルクアナライザーを使って分析すると、タッピングねじの締付けトルクや下穴の設定が適正かどうか確認することができます。
下穴を開けた樹脂の板に、タッピンねじを電動ドライバーを使ってねじ込む際のトルクを測定したデータを分析すると、雌ねじの形成段階では、雌ねじをたてながら入っていくため、トルクが徐々に上がります。雌ねじの形成が終わるときに、ひとつの山の最大値(A)となります。このひとつの山の最大値が、樹脂の板に雌ねじをたてて入っていく際に必要とするトルクの最大値ということになります。
その後は、雌ねじの形成が終わっているため、トルクが少し下がっていくので、小さなトルクでねじ込めることが分かります。
ねじの頭が、樹脂の板に着座した際の、締めこみ段階に達すると、トルクが再び一気に上がっていきます。
さらにトルクをかけていくと限界に達し、ふたつめの山の最大値(B)となります。このふたつめの山の最大値が、雌ねじを破壊し空回りする、空転トルク値ということになります。
その後、雌ねじは破壊され、ねじバカ状態となり、トルクが一気に下がっていきます。
トルク設定方法
トルク設定は、トルク曲線の見方から、ひとつの山の最大値(A)以上ふたつめの山の最大値(B)以下で設定する必要があることが分かります。
工具やネジのバラ付きを考慮に入れると、中間点ぐらいに設定するといいですね。
また、ネジ自体や材料、下穴精度などの要因によっては、数値がばらつくケースがあります。1回のテストで設定せず、複数回のテストが必要となります。
その際、安易に複数回の平均値で設定してしまうと、トルクの最大値(A)や空転トルク値(B)が、ギリギリになってしまう恐れがあり、何本かに1本の割合で、トルク不足により、最後までねじが締まっていない状態や、空転トルク値を上回ってしまい、空回りが発生する可能性があります。
このような状態は、下穴の有無や大きさにもよりますが、樹脂などの柔らかい素材や、新素材・MDF・パーティクルボードで起こりやすくなります。
樹脂用のねじやタップタイト、パーチビスなど、素材に合わせたねじの選定や、トルク最大値と空転トルク値に明確な差を持たせることなどで、トルク曲線のバラ付きを押さえたり、ねじのトルク不足や空回りを解消することができます。
まとめ
今回は「トルク曲線」について紹介しました。
ねじの締結不良には、トルク不足により、ねじが着座しなかったり、トルクのかけ過ぎにより、雌ネジを破壊し空回りしてしまったり、トルクのかけ過ぎにより、十字穴がつぶれてしまったりと様々な原因があります。このような状態を防ぐためにも、トルク曲線を活用した適正なトルク設定が重要です。参考にしてみてください。