あなたの職場ではトラブルの時に部品を探す時間で機械が必要以上に停止することがありませんか?
もし見える化が進んでいれば、すぐに部品は見つかりトラブルは短時間ですんだかもしれません。そうすれば機械が停止していた時間に多くの製品が製造できたかもしれないのです。在庫管理を見える化することでイライラの原因となる無駄な生産停止が防ぐことも可能になります。
この記事では、在庫管理の見える化の必要性や範囲とその進め方について解説します。
1.見える化とはなにか?
製造業では、昔から「見てわかるように管理する」ことが重要であるとといわれていました。この管理方法が「見える化」といわれるようになってきました。
文字や聴覚による情報伝達は、人が一度頭で情報を処理して問題に変換しています。一瞬の判断ミスで労働災害や大きな損失が発生することがある製造現場では、頭で処理する時間に命の危険さえともなうかもしれません。
そこで「見える化」です。視覚での認識を最大限に活用すると感覚的に問題をとらえ、最短の時間で対応できる方法です。
今では視覚のみでなく感覚的にわかりやすく伝える手法を「見える化」と称し、製造業のみならずビジネス全般に使われています。
見える化とは
- 視覚を使って感覚的に問題を管理する手法
- 文字や聴覚よりも短時間で問題解決につなげることができる
- 感覚的にわかりやすく伝える手法も「見える化」という
2.在庫管理を見える化する目的は?
在庫管理での見える化の目的はなんでしょうか?それは無駄をつくらないことです。具体的に例をあげて説明しましょう。
Q1.次の図で2番の長方形は何個あるでしょう?
Q2.次の図では 2番の長方形 は何個あるでしょうか?
Q1とQ2では、どちらが早く答えが出せたでしょうか?間違いなくQ2だとおもいます。
Q1は見える化ができていない状態、Q2は同じ形を見える化した状態です。
見える化すれば結果を得るまでのスピードだけでなく、探すときのストレスも低減されます。Q1では、答えを導くためには長方形以外の全部の形と数字を確認する必要があります。しかしQ2では、まず長方形のグループを探しだして、長方形のグループのみの数字を確認すればすみます。
見える化は、探す時間の無駄と探すストレスの無駄を減らすことができます。
探す時間は他の作業に回せますし、ストレスが少ないと気持ちよく仕事ができます。1日何回モノを取り出す必要があるでしょうか?1回ずつは小さな効果ですが1日、1年となると、見える化は大きな削減効果を生みます。
また、見える化をすると在庫を把握しやすくなるので間違いも減ります。つまり在庫管理の時間も削減できます。
在庫管理を見える化する目的
- 探す時間の無駄を減らすため
- ストレスの無駄を減らすため
- 在庫管理の時間を減らすため
3.見える化する在庫管理の範囲は?
見える化というとモノの置き方だけについて考えがちです。しかし、見える化の範囲は以下にまで広げる必要があります。
- 場所の見える化
- 動きの見える化
- 考えの見える化
置き方の見える化
これは見える化の基本事項であり、見える化と聞いて、まず思いつくすことだと思います。置き方の見える化は段階があります。この段階については5.在庫管理見える化のステップ で詳しくのべます。
どんな在庫でも、段階的にすすめることで効率的に作業が進みます。
動きの見える化
見える化は継続してこそ意味があります。見える化したつもりでも、すぐに崩れてしまうようだと、実は作業者の意識の中では見える化ができていません。見える化が崩れるタイミングはモノが動くときです。つまり入荷と出庫の際の作業を見える化する必要があります。見える化する項目としては以下の項目を参考にしてください
- 保管形態
- 入庫の方法
- 途中まで使用したものをどう保管するか
- 購入のタイミングなど
動きのルールは、いままでのルールを取り込んだ方が習慣化が容易です。すべてを新しくするのでなくベテラン作業員のマイルールに客観性を持たせて文書化するのも良い方法です。見える化を進める際に障害になりやすいベテランの方の違和感低減にもなります。多くの人に一役かってもらうことは好循環を生みます。
考えの見える化
考えを見える化できると、見える化の成功に近づきます。考えは運用の方法ともいえます。考えの見える化として、分類方法の見える化とスケジュールの見える化があります。
分類方法の見える化
分類ルールの見える化は、見える化の運用の根幹をなすものです。
部品ごとに分類するのか、製造品目ごとに分類するのか、作業ごとに見える化するのかは各職場ごとに事情が違います。
例えば、以下二つの分類方法をみてください。
一見、種類ごとに分類すると整然としてきれいですが、1は1の製品、2は2の製品と番号が製品をあらわしているなら、製品ごとの作業に1区画が対応しますから、何も考えなくても”1の製品のトラブルには1のグループを持っていく”というルールをつくることができます。熟練しなくても必要なものを一瞬で取り出すことができるので、時間短縮の目的では番号ごとに分類する方がよりよい見える化と言えます。
また、以下のようにルールを明確に表示することで迷う時間を短縮することができます。
スケジュールの見える化
スケジュールを見える化することは、”知らなかった人の仲間外れ感”という無駄な感情をつくらないためにも大切なことです。
スケジュールを周知することは見える化の重要なステップです。
在庫管理見える化の範囲
- 置き方の見える化…段階的に進める
- 動きの見える化…入荷と出庫の際の作業手順
- 考え方の見える化…グループ化の考え方とスケジュール
4.在庫管理見える化導入のポイント
在庫管理の見える化のポイントは4つあります。以下に詳しく説明します。
point問題が起きている場所を見える化すること
できれば、”問題が起きている場所を見える化”しましょう。問題が起きているということは、大きな無駄が出ているということです。
一度見える化すれば大きな成果が出て無駄が目に見えて減るのでモチベーションアップにもつながります。
point シンプルでわかりやすく見える化すること
できるだけシンプルなルールで見える化しましょう。ひとりで活動していると詳細に管理したくなりますが、それでは継続できなくなります。”ルールはシンプルに”が鉄則です。
point 全員が同じ判断ができるよう見える化すること
全員が同じ判断ができるように”考えなくても感覚でわかる工夫”をしましょう。全員が同じ判断ができれば同じものは同じところに置かれ、同じ順番で使用されるはずです。それは見える化の継続につながります。
point 犯人をつくらないこと
活動しているときに誰かの悪口が出てくることがあります。例えば「○○さんがこんなにたくさん買った」とか、「△△さんは、いつも片づけないからこうなる」とかといったことです。
そういいたくなる気持ちもわかりますが、見える化の活動をするからには過去にとらわれずに今後をみる気持ちが大切です。これからの活動で、ひどいルール違反をする場合は別に教育するとして、見える化の活動中は犯人をつくらないよう心がけましょう。
在庫管理見える化導入のポイント
- 問題が起きている現場を見える化
- シンプルでわかりやすく
- 全員が同じ判断ができるよう考えなくても感覚でわかる工夫を
- 犯人をつくらない
5.在庫管理を見える化するステップ
見える化の最初の活動はなんだと思いますか?それは整理整頓です。「見える化」を実践している企業は、現場の整理整頓から改革を始めています。
そして整理と整頓であれば、まず第一に整理をします。
整理は「いるものといらないものを分け、いらないものを捨てる」という意味。整頓とは、「必要なものをいつでも誰でも取り出せるよう、秩序だてて配置すること」です。
必要ないものを見極め排除したうえで、必要なものを誰でも取り出せるように秩序立てて配置するのです。整理整頓であって、整頓整理ではありません。
step1 全部出す(整理1)
最初に保管場所からすべてを出します。物理的に全部だせなくても、対象となる物品はすべて把握できるようにします。
step2 必要なものと必要でないものをわける(整理2)
錆びたネジやナット、校正から外れた圧力計、固まった接着剤のような使用できないものや、誰も使い方を知らない測定機械は生産に必要ないものです。保管場所から出しましょう。すぐに出せない場合は、不用品として別に置いておきましょう。
step3 必要なものを分類する(整頓1)
必要なものはルールに従って分類しましょう。分類方法については、あらかじめ周知しておきます。
step4 置き方を決める(整頓2)
もし新しい棚など保管用の物品が必要なら、ここで購入を考えます。
整理をする前に棚を買って、無駄を増やしてはいけません。
step5 教育したのち、在庫管理を運用する
見える化後すぐに、どう見える化したのか、どう運用するのかについて教育します。step3の分類の段階で一度分類方法を周知してありますが、あらためて分類方法を説明します。
教育した方法で在庫管理を運用します。
step6 定期的に不具合を確認して見える化を進める
運用後してわかる不具合や使いにくさもあります。運用開始後1週間後、3ヶ月後、1年後に見直しをして不具合を改善します。改善するまでは従来のルールで行う方がスケジュールを見える化するためにもよいでしょう。
6.見える化の疑問
見える化するためには時間がかかるのに、わざわざ見える化する必要があるの?
見える化と片付けって何が違うの?
見える化は、あくまでも作業の無駄を省くのが目的で、片付いている状態はその結果として生まれるものです。
見える化が進んでいる職場は働きやすいって本当?
まとめ
在庫管理の見える化について、目的、範囲、ポイント、ステップと詳細に解説しました。在庫管理の見える化は、手間のかかる作業ですがポイントを押さえてステップを進めれば、効率よく進めることができます。
もし倉庫を見渡してため息をついているなら、まさに今がはじめどきかもしれません。効率よく、風通しの良い職場をつくりましょう。