製造業において、コスト削減で余裕を生み出せるとはどういうことでしょうか。
例えばDX化で利益率を向上させている事例も多くあります。余裕を生むコスト削減では、取り組みの優先順位が大切です。
この記事では余裕を生むコスト削減の3本柱の手法と、コスト削減を阻む壁やアイデアを整理する方法をご紹介します。
製造業にとってのコスト削減は余裕を生み出すツールになりえる
平成30年12月に経済産業省から発表された「DXを推進するためのガイドライン」のなかで「明確な目標」がないと、DXが失敗しやすいとされています。
このとき、製造業で目標に設定されやすいのが「コスト削減」です。
製造業では、コスト削減を目標にして、DXなどの技術革新を使って利益率がアップさせる事例が多く報告されています。製造業にとってコスト削減は、余裕を生み出すツールにもなりえるのです。
余裕を生むコスト削減で最初におこなうこと
製造業では、余裕を生みながらコスト削減を実施することが可能です。それは、「ムリ・ムラ・ムダ」をなくせば、品質や安全が向上し、作業性も良くなるからです。
つまり、製造業のコスト削減は「ムリ・ムラ・ムダ」を探すことから始めるのが良策となります。
基本3本柱の分野のコスト削減を優先する
コスト削減をする場合に、もっともコスト削減効果が高いのは、人的項目と設備関連です。
品質や安全にも、無駄がありコスト削減をしたくなるのですが、いざというときに無駄な部分がなければ臨機応変で行き届いた対応ができなくなるリスクをはらんでいます。
人的項目と設備関連、そしてそれらをつなぐシステム見直しの3つをコスト削減の柱として優先的に活動するのが効率的で無理がないでしょう。
製造業のコスト削減に大きくかかわる基本3本柱
製造業は設備を使って人が作業して付加価値のついた製品を製造し、それがシステム化されている業態です。
人間に例えれば、設備が臓器、システムが血であり、人や製品がエネルギーとなって循環し動かしていると考えれば、わかりやすいでしょう。
つまり、製造業のコスト削減は、以下が基本3本柱となります。
- 人的項目
- 設備関連
- システム
余裕を生むコスト削減のためには、この3本柱の分野の「ムリ・ムラ・ムダ」を優先的に探していきましょう。
人的削減は不満点の改善とスキルアップから
人的削減は、現状の人員で最大効率を出すことが必要です。
人員削減の前にまず増やさないことを考えましょう。つまり作業効率のアップです。
作業効率アップは、作業者の不満にヒントが隠れていることが多くあります。
人は、無理をしていても我慢してしまう生き物です。このままだと、作業効率アップのポイントはみえてきません。
しかし、直接作業者にインタビューすれば「ここがやりにくい、しんどい」などの声があがることがほとんどです。
無理な姿勢をしなくても作業できるようにする、無駄な動線を見直すことで、効率がアップしコスト削減につながります。
照度を確認も効果があがりやすい方法です。作業を行う手元の照度を見直せば、作業のスピードがあがったり、見落としが少なくなったりすることが多いものです。
また、人的削減の別の側面としてスキルアップがあげられます。
ひとりひとりのできることが増えれば、人員の配置が楽になりますし、休暇の影響も少なくてすみます。
業者を呼ばなければいけないところを自社で済ませられれば、機械の停止時間は短縮可能です。
また教育をおこなうときは少しずつ間をあけずにおこなうと、より効率的です。習得した技術は、すぐに誰かに教えれば、身につきやすくなります。教育対象として、ベテラン社員への再教育なども使用すれば、新しい知識を展開できます。
設備関連
設備は止まらないのが一番安上がりです。停止時間を常に意識するように記録する、そして
なにが停止の元になっているのかを意識するだけでも、最初はコスト削減効果がでるでしょう。
たとえば、外注品のばらつきのためロットによって設備の調整をする必要があるのなら、メーカー指導が必要。他工程との時間のずれであれば、生産計画を見直すなど、他社の業務改善例を参考にすれば、いっそうコスト削減が進みやすくなります。
また、こまめにメンテナンスの時間をとり、設備を大切に使えば、異常停止が少なくなります。人的削減にも通じますが、丁寧なメンテナンスは設備の学びにもなります。設備にも愛着が生まれ、通常とは違った音や動きなど、設備に注意を払うので異常に早く気づけるようになれます。早めに対策をすれば、設備にかける経費は少なくてすむのです。
空調や水、圧縮空気などについても、定期的なメンテナンスを行い、漏れなどを修繕し良好に運用することが、結局はコストダウンにつながります。
システム
システムの妥当性は、コスト削減に大きな影響を与えます。
近年、多く採用されているクラウド型のシステムは、システムの専任担当者を必要とせず、初期費用、セキュリティ対策費用を削減できます。
現在、世界的に情報革命が進んでいるといわれます。システムコストについては、日進月歩です。
製造業の場合は、設備導入と同時にシステム導入されて、そのままとなっている場合も多いものです。一度、現行システムの費用と最新のシステムの費用を比較することをおすすめします。条件にもよりますが、大きなコスト削減ポイントが隠れている場合も多いようです。
余裕を生むコスト削減活動を阻む3つの壁
余裕を生むコスト削減活動は、「ムリ・ムラ・ムダ」を探せばよいのですが、進まないこともあります。そんなとき何が問題になっているのかわからなくなって、活動が停止するときは、壁ができているものです。。
そんな時のために、壁となりやすい「思い」をあげてみます。不思議と原因となる「思い」の根本が見えれば、解決策が見えてくるもの。これらが複合的に作用している場合もありますが、ひとつひとつ「思い」をほどいて、コスト削減を進めていきましょう。
1.意識の壁
自分の今ある状態や、周囲の状況などの認識が間違っているのに、そのことに気づかない壁。客観的な事実や、目標を改めて提示する必要があります。
例)
・今が一番と思っている
・自分から動く必要がないと思っている
・やらない理由を探す
・何のためにやっているのか、目的がわからなくなっている
・手段と目的を取り違えている
2.感情の壁
物事を冷静に判断できず感情的になってしまう壁。自己肯定感の低さが原因となっている場合が多く、壁を作り出してしまう人の疎外感を解消するため、相手を尊重することも大切です。
例)
・自分が頑張っていることを否定された
・自分以外のアイデアは取るに足らない
・あいつらの言っていることは、すべてダメ
・お前の言うことは信用できない
3.原則の壁
ルールや慣習、枠にしばられすぎる壁。今までの心情として〇か×で考えたほうが楽だと思っている場合、新しい考え方の利点を丁寧に説明し、変化が許容されることを理解してもらいます。知識がありすぎて否定したがる人には「さすが!では、○○なのもご存知ですよね?」と、ほめて始めるのも効果があります。
例)
・このやり方で習った
・そういう決まりだ
・何もわからず、無駄だといっている
・考える必要はない
余裕を生むコスト削減|無駄を見つける目をつくるには
余裕を生むコスト削減では、「ムリ・ムラ・ムダ」を探すことが重要になります。そのためには何が必要でしょうか?一般的に以下のようなポイントが考えられます。
- つねに、よりよい方法を考える癖をつける
- アイデアを思いついたら書きとめる
- 新人の目を大切にする
- 不満を軽視しない
- ワンマンにならない
- 学ぶ
- ムダだと思っていることを話せる雰囲気を作る
- ミーティングで話題にする
- 他社のアイデアを集める
- 個人攻撃をしない
アイデアを整理する5つのツール
最後に、アイデア出しのときに役立ついくつかの方法をご紹介します。それぞれコスト削減で実績がある方法です。場面ごとに取捨選択して、よりよいアイデアを作り出してください。
不満ブレインストーミング
作業者に、ムダだと思うこと、無理していると思うこと、ムラがあると思うことを、思いつくままあげてもらう方法です。あげた意見はホワイトボードなどにどんどん書いていきます。
この際に否定的な意見を挟まないのがポイント。抜けがないように 作業ごと工程ごとなどに分けて進めるといいでしょう。
最後に意見の多いもの、改善案があるものについて抽出し、今後の検討課題とします。
マインドマップ
問題がたくさんあって、方向性が見えないときに使用し、問題のつながりを系統化し一目で分かるように図解する方法です。不満ブレインストーミングなどで、あがった問題についても使えます。問題の状況を知り、優先すべき解決策を探るときに有効です。
最近では無料のアプリなどもありますので活用してみるといいでしょう。
アンチプロブレム
テーマとは真逆の課題を設定してアイデアを出すフレームワークです。
例)工程の能率をさげるためにはどうすればいいか?
常に考えなれている思考の方向を逆にすることで、新鮮な視点になり、見えないものがみえてきます。
オズボーンのチェックリスト
アイデア出すときに、考え方を9つに固定してアイデアを出す方法です。考え方を固定することで、考えやすくなります。
転用:他に使い道を探す
応用:類似事例を探す
変更:変えてみる
拡大:拡大してみる
縮小:縮小してみる
代用:置き換えてみる
再利用:配置や並びを換えてみる
逆転:逆にしてみる
結合:組み合わせてみる
3.なぜなぜ分析
まず問題を設定して、それはなぜなのかを考え、またその次になぜなのかを考える方法です。
例)
設備が停止するのはなぜか?
↓
異常品を取り除くのに時間がかかるから
それは、なぜなのか?
↓
異常品が設備にはさまるから
それはなぜなのか?
↓
正常品と形が違うから
↓
アイデア:では、設備に入る前に選別できないか?
なぜなぜ分析のポイントは堂々巡りを防ぐことです。なぜの数は3〜4までにすると、やりやすいでしょう。
まとめ
製造業は、コスト削減で余裕を生み出せる業態です。最近ではDXを使って、利益率を向上させている事例も多く、取り組みがいがあります。
余裕を生むコスト削減では、取り組みの優先順位が大切です。人的項目、設備関連、システムを優先すれば、コスト削減効果も大きくなるでしょう。取り組みの際には壁がなんであるか把握し、ツールをうまく使いましょう。
システムのコスト削減には、システム化も必要です。製造業はクラウド型のシステムが今注目されています。クラウド型生産管理・在庫管理システム「鉄人くん」なら製造業が必要とするシステムを網羅しています。一度導入を検討してみてはいかがでしょうか?
また、トライアルキャンペーンも実施していますので、システムの導入を検討してみたいとお考えの方は、こちらからお気軽にお問合せ・ご相談ください。