在庫管理は、物を扱う業務にとって、コストカットや利益確保のために欠かせない業務です。特に製造業の在庫管理は、原材料と中間製品、外注品、製品、消耗品と性質の違う在庫が存在し、複雑になっています。そこで大切なのが視点を定め、目的を決めて管理する視点です。ここでは、製造業の在庫管理の特徴と3つの視点から、最適な在庫管理を、簡単に進める考え方を紹介します。
製造業での在庫管理の特徴とは
製造業での在庫管理は、他の業種と違う部分が多くあります。ここでは、その違いを解説します。
在庫の種類が多い
製造業には、原材料と中間製品、外注品、製品、消耗品と、それぞれ性質の違う在庫が存在します。これらを在庫の目的ごとに分野分けして管理する必要があります。
管理者が複数ある
たとえば、入荷前の原材料は物流部門の管理ですが、試験後は製剤部門の管理になります。製造行為をおこなったあとは、また物流部門の管理になります。製造行為の途中で補完することもあるかもしれません。このように製造業の在庫は、その物品の置かれている状況によって複数存在します。
在庫が形を変えて違う在庫になる
原材料を使って、中間製品を製造し、中間製品は、また製造行為を実施して最終製品になります。最終製品は原材料や中間製品を集約したものです。ですから、在庫であったものが、違う在庫になるという現象がおきます。
スケジュールによっては、長期在庫もありうる
市場で少しずつしか販売されない商品は、1ロットの大きさと販売量の関係で、長期在庫になることがあります。このような製品の場合、原材料についても、メーカーの最低発注単位によっては何年も在庫を抱える必要がでてきます。長期在庫の場合、品質が維持されているかを確認する業務も必要になります。
やりやすいところだけ管理しがち
いまの製造業は基本的に忙しいものです。円安で原材料費は高騰し製品の原価率は高まるばかりです。人件費はコストに大きく関与するので、経営者は遊んでいる人員まで養う余裕はなくなってきています。
そんななかのコスト削減は、どうしても「やりやすい」ところだけになりがちです。
でも、それが全体としては業務のゆがみを発生させ、新しい無駄を発生させる原因になっています。
製造業で在庫管理に見える化が必要
製造業の在庫管理は複雑なうえ、管理も煩雑です。ですから煩雑な部分は、なかなか手が出ない部分になっています。こんな場合、見える化が役に立ちます。
在庫管理の見える化がコスト削減につながる理由とは
「見える化」は、製造業にとってなじみのある言葉です。もともとは「目で見る管理」といわれてきた活動で「三現主義」が基になっています。
三現主義とは、 頭で考えるだけでなく、実際に“現場”で“現物”をみて、“現実”を理解して問題解決をに向かうという考え方です。
なんとなく問題だと感じていることが、はっきりするので、問題解決の道筋も見えやすくなります。
製造業の在庫は取り扱う数字が大きい
製造業をシンプルに表現すると、物に付加価値をつけて、より価値のある製品として販売する業態であるといいます。
在庫を金額にすると売上の数倍になり、金額が大きくなります。つまり、取り扱う数字が大きいのでコスト削減効果が大きく出る分野といえます。
在庫管理見える化のポイント
製造業で在庫管理を見える化する場合、まず。それぞれの在庫の目的を理解することが大切です。
まず、製品、原料、材料など原価になる在庫と、それ以外を分けて混同しない管理が必要となります。また、製造業では、製造と在庫管理が連携して在庫の管理ができます。これも、在庫を増やしすぎないためのポイントといえるでしょう。また視点を絞った見える化も結果につながりやすい方法です。
原価とそれ以外を見える化してコスト削減につなげる
まず、在庫管理で見える化すべきなのは、製品、原料、材料など原価になる在庫と、それ以外を分けて混同しないことです。
原価をさげ過ぎると、製品自体の品質に影響するかもしれません。これを避けるために必要なのは、製品のベネフィットです。
製品のベネフィットとは、その製品が「誰に」「何を」届け、その結果、どんな価値を生み出しているのかということで、製品自体の目的ともいえる部分です。原価について、ベネフィットの視点を忘れると、製品自体の価値が落ちてしまいます。
もちろん原価以外の項目でも、製品のベネフィットを左右する場合もあります。製造機械に使用するオイルや品質試験の試薬などは、コスト意識だけでなく、求める品質を考慮する必要があるでしょう。
製品のベネフィットを忘れずに、在庫管理の見える化を実施するのが、製造業でのコスト削減のポイントです。
在庫管理の3つの見える化視点でコスト削減につなげる
工程の視点
製造業はさまざまな工程が集まって、製造行為をしています。事務、製造、品質管理、物流、それぞれの業務がなければ製造業が成り立ちません。そして、工程ごとに在庫の性質が違いますが、共通のものもあります。
共用品の存在
プリンターのトナーなどの事務用品や洗浄剤や清掃用具など、共通の使用品は、工程ごとに購入するよりも、まとめた方が効率的です。工程の視点を持てば、工程横断的なコスト削減も可能になります。この場合、自工程の出費にならないと、使いすぎることもあるので各工程の使用量を把握できる仕組みが必要かもしれません。
使用期限の問題
工程の視点を持てば、対策が可能になるのは、試薬や滅菌品など使用期限がある物品を多く持つ工程での使用期限管理です。場合が多く、在庫管理をしていれば使用期限の管理もできます。
使用期限をすぎれば、その在庫は価値を産まず廃棄するのに処理費用もかかります。使えなくなった在庫は無駄の代名詞です。使用期限のある在庫が多い工程では、使用期限を管理するのも大変です。見える化をすすめて、できるだけ労力を使わない方法を実践すれば、労務費などにもいい影響があるでしょう。
参考までに、使用期限の見える化に使用できる方法をいくつかあげてみます。
使用期限管理のアイデア
- 使用料を記載して、定期的に確認する
- 使用量を見える化して、在庫の減り方を把握する
- 目標を決める。業務改善などの項目にするのもおすすめ。
情報の共有化によるコストカット
製造工程の流れを他の工程に見える化して共有化すれば、コストカットが可能です。たとえば、原材料を製造開始のタイミングにあわせて入荷して倉庫保管の時間を短くできますし、品質試験の完了をデータとして製造現場でも利用できれば待ち時間を減らし、残業も減るかもしれません。
生産計画にとっても、各工程がなにを実施しているかを把握できれば、必要以上の在庫は必要なくなります。
コストの視点
在庫の見える化によって見えてくるのが、どれにどれだけ費用がかかっているかということです。これでパレートの法則を使用した在庫管理が可能になります。
パレートの法則とは
パレートの法則は、イタリアの経済学者ビルフレッド・パレートが見出し、大きいものは、より大きな存在になるという法則です。都市の人口規模や発言の多い人が存在感を増す傾向など、社会や自然でみかけられます。
企業経営に当てはめると、売上げや利益が一部は、一部の社員や顧客に依存してしまうことです。
パレートは、エンドウ豆の80%が20%のサヤから収穫されたのをみて、この法則を着想したといわれています。コスト削減についてはコストがかかる費目について、コスト削減活動をすれば成果が上がりやすい、という法則にあてはめられます。
コスト削減はコストのかかっているものから始める
コスト削減は、まず各工程の購入費用トップ3について、無駄遣いがないか見直すと効率的です。対策も集中できますし、成果も上がります。小さなコスト削減でも、もともとの費用が大きければ、効果が大きくなります。
仕入れの視点
在庫管理の視点には、仕入れ先の視点もコスト削減として大きな要因となります。
仕入先によっては複数の在庫品を納入していることもあります。商社や卸など、まとめて納入に特化している業態もあるでしょう。
このような場合は、まとめることでコスト削減の交渉もしやすいものです。相手先にとって、こちらが重要な取引先であればあるほど、効果は高くなります。
これにパレートの法則を応用して、支払額の多い業者数社についてコスト削減を協議する方法も選択できます、輸送をまとめたり、過剰な梱包を見直したりなど、仕入れについてもコスト削減のできるポイントがあります。
在庫管理を見える化するポイント
在庫管理を見える化するポイントは、①製品のベネフィットを確保する ②工程とコスト、仕入れの視点を持つの2点です。
在庫は必要ですが、無駄を省きたい項目です。そのため在庫管理には冷静さが必要になります。コスト削減に夢中になると必要なところまで波及するリスクが発生してしまいます。そのためには、今回の記事で紹介したポイントをおさえて見える化し、コスト削減を目指すべきなのです。
また、冷静さを失わないために、システム化や情報の共有も欠かせません。
まとめ
在庫管理は、物を扱う業務にとって、コストカットや利益確保のために欠かせない業務です。特に製造業の在庫管理は複雑で、ともすれば「やりやすい項目」だけになりかねません。そこで大切なのが視点を定め、目的を決めて管理する視点です。それには、システム化も重要なファクターになります。
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