2019年に経済産業省が公開した『DXレポート』では、ブラックボックス化したレガシーシステムが残存した場合、2025年までに予想される経済損失は最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性があると指摘されています。また、そのことを『2025年の崖』と呼ばれています。
参照:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
ユーザ企業は、DXを実現できずデジタル競争の敗者となり、多くの技術的負債を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が難しくなるでしょう。また、ベンダー企業は既存システムの運用・保守にリソースを割かざるを得ず、成長領域であるクラウドのサービス開発ができません。レガシーシステムサポートを継続するしかなく、多重下請構造から脱却できないのです。
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『2025年の崖』の概要とは?
2025年の崖で問題視されているのは、「日本のインフラ整備や各企業がデジタル化の波に取り残され、古い技術のまま事業を続ける」点です。新しいモデルに対応できないのはもちろん、「古いシステム維持管理費の高騰」「管理人材不足」「システムサポートの終了」「セキュリティ」などさまざまな問題が懸念されています。
また古い技術に頼り続けるため、若い世代の育成にも支障が生じ、世界の経済競争から取り残されてしまう可能性もあるのです。2025年の崖が現実になった場合、2025年から毎年12兆円もの経済損失が生まれると予想されています。
レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、新しい技術の普及などにより、古くなった技術や仕組みをもとに構築された基幹システムなどのITシステムです。主にメインフレームと呼ばれる大型コンピュータやオフコン(オフィスコンピュータ)、構築から20年以上経過するシステムのことを指します。
時代遅れのシステムとも呼ばれ、
- 技術の老朽化
- システムの肥大化・複雑化
- ブラックボックス化
などの問題を抱えており、官民問わずDX推進の足かせになっています。
国を挙げて推進されるDXにおいて解決すべき重要な課題として扱われ、レガシーシステムの刷新は、DX実現に必要不可欠とされています。
レガシーシステムが引き起こす「2025年の崖」問題とは?
上記でも説明した通り、『2025年の崖』とは、レガシーシステム問題に対応できなければ、DX実現が難しくなるだけでなく、2025年以降には最大12兆円の年間経済損失が生じるという問題です。
レガシーシステムの改善はDXが注目される以前から存在する課題でした。しかし経済産業省が2018年に発行した『DXレポート』で明らかになった2025年の崖問題をきっかけに、対応の緊急度が高まります。企業がデジタル競争社会で生き残るにあたって対応すべき問題として、レガシーシステムが紹介されたためです。
2025年に予測されているレガシーシステムがもたらす悪影響は次の通りです。
- データ活用や連携がうまくいかず、デジタル競争の敗者になる
- システムの維持管理費が、IT予算の9割を占めるようになる
- システムトラブルの発生やデータ滅失のリスクが増加する
情報システムがレガシーシステムになってしまう原因とは?
レガシーシステムが生まれてしまう原因は、単なるシステムの老朽化に限りません。むしろ人的なものが大きいといえるでしょう。今後の予防のためにも、原因をしっかりと押さえておきましょう。
【担当者の退職などによるノウハウの消失】
レガシーシステムは基本的に、運用する企業独自の設計になっています。そのため独自の保守運用のノウハウをもった人材が定年などの理由から退職してしまうと、システムがブラックボックス化、レガシーシステムとなってしまうのです。
このリスクは技術者の定年対象に限りません。デジタル人材は一般的な人材と比べて転職以降が強い特徴があるため、突然の退職などのリスクが高くなっています。もしもの時のために、ノウハウのマニュアル化など技術継承の対策を実施しておくべきです。
【繰り返される部分最適】
必要に応じて部署ごとにシステムを最適化したり、無理な新技術を導入したりすることを繰り返していると、システムが複雑化・肥大化し、ついにはレガシーシステムと化します。
これを防ぐためには、全体最適の視点や部分最適を行わせないためのガバナンスを効かせるなどの対策が必要になってきます。
【システム開発会社への依存】
自社にデジタル人材がいないことやコスト削減のために、システム設計をシステム開発会社に丸投げしてしまうことがあります。メリットを目的に取られる手段ですが、これもレガシーシステム化の原因のひとつです。
システム開発を外部に依存し、社内にシステムに関するノウハウを持った人材がいないために、適切な運用ができず、レガシー化のリスクが高まるのです。保守運用を外部企業に任せることも可能ですが、今度はベンダーロックインと呼ばれる、システム構築を依頼した企業にしか頼れなくなる自体が発生します。
こうした自体を予防するためには、自社でしっかりとデジタル人材を確保・育成した上で、バランスよく外部業者に頼れる体制づくりが必要です。
レガシーシステムから脱却する為の手段とは?
経営やDXの重要課題であるレガシーシステムから脱却するためには、場当たり的な修正では足りません。システムの刷新、移行、変更など対策が必要になってきます。自社の状況に合わせて、必要なものを選択していきましょう。
もし社内に適切な判断ができる人材がいない場合は、専門家に相談しながら、適切な方法を選ぶとよいでしょう。
【モダナイゼーション】
モダナイゼーションとは、現代化を意味する言葉です。ITの分野では、レガシーシステムを現代に合わせて刷新する意味を持ちます。
具体的にはソフトウェアや蓄積されたデータを活かしつつ、最新の技術と組み合わせ、システム基盤を刷新することです。新しくシステムを開発するよりも、低コストで実行できるなどのメリットがあります。
【マイグレーション】
マイグレーションとは、移行を意味する言葉です。モダナイゼーションが既存システムのソフトウェアやデータを活かすのに対して、マイグレーションではシステムやデータを新環境に移し、レガシーシステムからの脱却を目指します。
物理的なオンプレミス環境から、クラウド環境にシステムに移行する、クラウドマイグレーションなどがあります。システム刷新にあたり、業務への支障が少ないことやコストが抑制しやすいのがメリットです。
【SaaSなどのクラウドサービスの利用】
レガシーシステムの運用を止める、もしくはその一部をクラウドサービスに移行するのも、ひとつの手段です。
オンプレミス型のレガシーシステムと比べ、保守運用が不要の上、機能アップデートも無料、低価格で運用できるなどのメリットがあります。一方でカスタマイズ性が低く、システム運用がクラウドサービスの質や機能に依存してしまうというデメリットもあります。下記にメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
【メリット①手軽に導入できる】
1つ目は、手軽に導入できる点。パッケージ型と違ってソフトウェアのインストールが不要、ユーザーIDとパスワードを用いてサービスにログインすれば利用できるという手軽さがあります。
【メリット②導入コストを抑えられる】
2つ目は、導入コストを抑えられること。具体的には、
- 多くのSaaSは、使用した分の料金を支払う方式
- 毎月料金を支払う月額制
- アカウント数を調整して無駄なコストを回避できる
などがあります。
【メリット③デバイスのストレージを要求しない】
3つ目は、デバイスのストレージを要求しないこと。
- インストール不要で利用できる
- デバイス側のストレージ容量を要求しない
- 小さいストレージのデバイスでも利用可能
- デバイスの動作も安定する
と言った、扱いやすさがあります。
【メリット④ソフトウェアの管理が要らない】
4つ目は、ソフトウェアの管理が要らないこと。
- ソフトウェアを提供しているサーバー側が管理業務を担当
- 最新バージョンへの対応やデキュリティ対策までサーバー側が一括管理
この結果、ソフトウェアの管理は不要になります。
【デメリット①カスタマイズの自由度が低い】
1つ目は、カスタマイズの自由度が低いこと。自社で構築したソフトウェアと比較した場合、既製品であるが故にソフトウェアのカスタマイズという面で自由度は低くなってしまうでしょう。
【デメリット②不正アクセスの可能性が高まる】
2つ目は、
- ブラウザから簡単にアクセスできることはすなわち不正アクセスも容易
- データが物理的に存在する限り、不正アクセスのリスクにさらされる
といった理由における不正アクセスの可能性が高まることです。
【デメリット③プロバイダーの開発計画による制約を受ける】
3つ目は、プロバイダーの開発計画による制約を受けることです。
- 新しい機能が気に入らないケースがある
- インターネット接続次第で、ソフトウェアのパフォーマンスなどに適したタスクが制限されることもある
【デメリット④サービス停止時に自社で復旧作業ができない】
4つ目は、サービス停止時に自社で復旧作業ができないことです。
- 不定期に発生するサービス停止
- 自社の力ではサービスの復旧作業ができない
といった際に問題が生じれば致命的な事態になりかねません。
「クラウドファースト」に従って、クラウド型システムの導入を検討してみましょう
クラウドファーストとは、システムの開発や更新をするときに、クラウドサービスを最優先で検討するあり方のことです。クラウド市場の拡大とともに、クラウドファーストの考え方に沿ってシステム導入をする企業が増えており、政府も積極的なクラウド化を推奨しています。
従来は、システムを開発・運用する際は、自社でサーバーなどの設備を所有・管理するオンプレミス型が主流でした。現在でも、オンプレミスでシステムを運用するケースはありますが、敢えてクラウドファーストが推奨されるようになった背景には、上記で説明した様に、クラウドサービスの運用基盤を選択することによるメリットの多さがあります。
最近はクラウドベースのサービスが増えており、初期費用や毎月の利用料金も非常に安価になっています。また、多くの在庫管理ソフトが無料版や無料トライアル期間を用意していますので、まず無料で試した後、自社に向いていると判断できたら有料版にアップデートするというのもよいでしょう。
クラウド型生産管理システム「鉄人くん」は、わかりやすい画面と手厚いサポートで、システムが初めても企業でも使いやすくわかりやすいのが特徴です。
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