突然ですが、あなたの職場では在庫管理表は在庫管理の役に立っていますか?
「数字が合わない」「業者に納品を早めてもらった」など、在庫管理表があっても在庫に不具合が出ていませんか?
在庫管理表が良好に運用されていれば、在庫は管理され、少なくなれば必要な量が補充されます。また、突然のトラブルにも対応できます。しかし、在庫管理表が無駄になっていれば、本来の目的は達成できず、在庫管理活動が機能不全に陥っているといえるでしょう。
この記事では、在庫管理表を無駄にするNG行為と無駄にしない10のアイデアをご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
在庫管理表の役割
在庫を表の形に見える化したものが在庫管理表です。在庫管理表の役割として以下の3つがあげられます。
在庫の把握
在庫管理表は、在庫の数を把握するために使われます。表に落とし込むことで在庫を一目で確認することができるようになります。
欠品の防止
在庫管理表は必要な資材を,必要なときに,必要な量を,必要な場所へ供給できるようにするためのものです。
必要な製品を、生産したいときに生産するためには欠品がおきないことが必要です。したがって、在庫管理表は欠品防止に使われます。
過剰在庫の防止
逆に、在庫管理表は過剰在庫を防止するためにも使用されます。過剰在庫は最悪の場合は廃棄となるリスクがあり、生産コストに悪い影響を及ぼします。できるだけ必要最小限のコストで生産し利益を上げるために、過剰在庫は防ぐ必要があります。
在庫管理表の役割
- 在庫の把握
- 欠品の防止
- 過剰在庫の防止
在庫管理表を無駄にするリスク
在庫管理表を作成するには、ある程度、時間と労働力が必要です。せっかくの在庫管理表を無駄することで以下のようなリスクが発生します。
- 欠品によるトラブル時の停止
- 余剰品の増加による利益率の低下
- 保管場所の過剰な確保
- 労働力の浪費
- できていないことを日常的に見ることによるモチベーションの低下
在庫管理表を無駄にすると様々なリスクが発生する
在庫管理表の運用を無駄にするNG行為
NG行為①:作成漏れ
そもそも、在庫管理表になければ管理はできません。作成漏れには十分注意が必要です。
NG行為②:チョイ使用忘れ
チョイ使用は、トラブル時によくありますす。目的のためにわき目もふらずに部品を取りに行き、修理をおこない。在庫はほったらかし。
こんなことが、あたりまえに行われているのであれば、在庫管理表は意味をなさないでしょう。
NG行為③:記入ミス/インプットミス
記入ミスやインプットミスで、在庫管理表の数値に誤差が生じます。ミスが多ければ在庫管理表の信用自体が損なわれてしまいます。
NG行為④:不要感
在庫管理表が「必要ない」というムードが、在庫管理表を役に立たないものにします。役に立たなかった、必要性を感じなかったという経験を積み重ねると、どんどん在庫管理表は役に立たないものになってしまいます。
在庫管理表の運用を無駄にするNG行為
- 作成漏れ
- チョイ使用忘れ
- 記入ミス/インプットミス
- 不要感
ミスをおこさない、おこさせないためには
在庫管理を無駄にしないためには、NG行為を防ぐことが必要です。NG行為は、どれも小さなミスにすぎませんが、NG行為を防ぐためには様々な工夫が必要です。
「気をつける」ではミスはなくならない
ミスがおこった時に、安易に「気をつけてください」ということがあります。しかし、どんなにきつく叱責しても「気をつける」だけではミスはなくなりません。なぜでしょうか?以下のような理由が考えられます。
- 時がたてば、忘れるから
- 「気をつける」ことが多すぎるから
- 新しい「気をつける」ことができるから
- ミスが起きやすい状況は変わらないから
- ミスをしないと思っているから
ミスを防ぐためには「気をつける」以外の対策を取らなければなりません。
「気をつける」では、ミスはなくならない
在庫管理表を無駄にしない10のアイデア
せっかく労力をかけて運用するのですから、在庫管理表を無駄にしないように工夫しましょう。失敗の経験を積み重ねると、在庫管理表の運用は困難になってしまいますから早めの対策が必要です。
ここでは10のアイデアをご紹介します。
作成漏れを防ぐ対策
そもそも、在庫管理表に存在しない物品は管理できません。作成漏れには十分注意しましょう。
1.作成漏れをおこしやすい品目を知る
以下のような品目は表作成時に入れ忘れをしやすく注意が必要です。在庫管理表を無駄にしないように、管理から抜けやすい項目を最初に把握しておきましょう。
- 購買とは別のルートで入手する品目
- 複数の工程で使用するので持ち回りで購入する品目
- 購入周期が長い品目
- 整備の際に業者が持ち込む品目
- 新規に必要になった品目
2. 在庫マインドマップを作成する
マインドマップという考え方をご存知でしょうか?イギリスの著述家トニー・ブザン(Tony Buzan)が提唱した、思考や発想を”見える化”して脳内の情報を整理する手法です。マインドマップには
- 発想がでやすい
- 網羅しやすい
という特長があります。在庫についてもマインドマップを作成すれば「抜けなく漏れなく」在庫を把握しやすくなります。
3.複数チェックする
在庫管理表を作成するときには、運用前に複数で確認するべきです。できれば作業者すべてが目を通すことをおすすめします。
作成漏れを防ぐ対策
- 作成漏れをおこしやすい品目を知る
- 在庫マインドマップを作成する
- 複数チェックする
チョイ使用忘れを防ぐ対策
急いで使用して忘れてしまうことは、忙しい職場では発生しやすいミスです。管理を忘れない工夫で解決する場合が多いですが、収納方法をみなおし、おのずから使用しているのがわかるようにすれば、もっと確実です。
4. 使用するときに在庫更新を忘れない仕組みをつくる
チョイ使用をしても在庫更新を忘れなければ、在庫管理上は問題はありません。トラブル時には夢中になってしまうことで忘れるのですから、思い出す工夫が必要です。
とても単純なやり方ですが以下の方法でうまくいっていることは多いものです。
・入力まで使用済み品を捨てない
・入力まで包装やラベルを捨てない
5. 在庫の置き方を見える化する
以下の写真を見てください。整然とビーカーとフラスコが並んでいます。
この状態にしておくと、どのガラス器具が割れても、1個マイナスであることが一目でわかります。
場所が確保できるなら、このように整然と置くことで、見える化されて、在庫管理がしやすくなります。
使用するうちにゴチャゴチャにならないように、棚に置き場所の目印をしておくと、整然とした状態を保つことができます。
チョイ使用忘れを防ぐ対策
- 使用するときに在庫更新を忘れない仕組みをつくる
- 在庫の置き方を見える化する
記入ミス/インプットミスを防ぐ対策
記入ミス/インプットミスは初歩的なミスですが、なかなか減らせないミスでもあります。根気良く習慣化することで防ぎましょう。また、
6. 指差呼称をする
ミス防止には、指差呼称をおこなうことが効果的です。声を出して指を使って確認すると、ミスは大きく減ることが確認されています。複数人で実施すると、より効果が高まります。
参考資料:医療事故調査制度についてチーム医療 (mhlw.go.jp)厚生労働省
⑦ 確認工程を習慣化する
記入またはインプットしてから、数字を見返すことで、ほとんどの間違いはみつかります。確認作業は1秒かからないのですが、忙しい時は特に、習慣にしておかないと忘れがちな工程です。
習慣化するためには以下の3つが必要です。
- 行なう理由を理解すること
- 動作を取り入れること
- ある程度の期間意識して続けること
- 作業に集中すること
一番の習慣化のチャンスは作業に慣れる前の時期です。新人作業者のうちにメンターから確認作業も含めて作業を学ぶと、あたりまえに確認作業が実施できるようになります。
つまり「確認するのがあたりまえ」の環境にしてしまうのです。
また、ときどきミス撲滅週間を設け、確認の重要性について再教育し、ミスの少なさを競っても身につきやすいものです。
⑧ 入力文字を制限する
これはインプットミスを防ぐ方法になります。市販の在庫管理ソフトを使用する場合簡単に設定することができます。
エクセルの場合、論理的に間違った数値をインプットした場合にセルの色を変えることができます。参考にご紹介します。
(1) クリックドラッグでセルを指定し、エクセルで条件付き書式をクリックします。
(2) 新しいルールをクリックします。
(3) ”指定の値を含むセルだけを書式設定”をクリックし範囲を入力します
(4) これで、指定以外の数値を入力した場合に色を変えることができます。
これで設定以外の値を入力した場合、セルの色を変えることができます。
最小値を、発注点にしておけば発注点もわかりやすいのでオススメの方法です。
記入ミス/インプットミスを防ぐ対策
- 指差呼称をする
- 確認工程を習慣化する
- 入力文字を制限する
不要感を防ぐ対策
不要感を防ぐためには、在庫管理表が有効に運用されていることと、在庫が話題にあがる職場づくりが必要です。ここでは、両方を一度に対策できる方法をご紹介します。
⑨ 棚卸を実施する
在庫管理表が無用の長物にならないためには在庫の棚卸が欠かせません。定期的な棚卸は「在庫管理は適切に行われている」証拠でもあります。どんなに気をつけていても、ミスは0にはなりませんし、製造業では必要な物品が変化することもよくあること。棚卸の際には、以下に注意して実施しましょう
- 在庫管理表の数字と実際の数量を確認する
- 在庫管理表にない品目はないか確認する
- できるだけ複数で確認する
⑩ 担当者を決め分担する
在庫管理表の運用を分担し、それぞれに責任者をつくると責任の所在がはっきりし、「誰かがやるだろう」という依存的な気持ちを少なくすることができます。
担当を決めるときには、機械的に割り振るのではなく各自の仕事を考慮すると効率よく管理することができます。
在庫管理表の活用で能率と利益率をアップさせよう
在庫管理表を無駄にするNG行為と無駄にしない10のアイデアと紹介してきました。あなたの職場にあてはまるNG行為があったでしょうか?
NG行為をみつけたら、紹介したアイデアを参考に自社にあった対策を練ってみましょう。
在庫管理表は機能を発揮すれば、とても有効なツールです。突然のトラブルにも対応できる体制をつくる元となります。せっかくの在庫管理表を無駄せずに、ぜひ、あなたの職場でも有効に活用してください。