業務改善は、多くの製造業で求められる取り組みですが、改善施策で思うような成果が出ない・どのような取り組みが効果的なのかと、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、製造業企業4社の業務改善成功事例を紹介します。
製造業で業務改善が求められる理由とは?
昨今の製造業では、業務改善・DXなど、新たな体制への変化・変革が求められています。この背景には、製造業が抱える下記3つの課題があります。人手不足の深刻化・働き方改革や労働時間短縮への対応・自社の競争力向上です。まずは、製造業で業務改善が求められる理由を紹介します。
【人手不足の深刻化】
2002年には1,202万人だった製造業就業人口が毎年減少しており、2019年には1,063万人にまで減少しました。仮に、製造業企業が変化せず、人手不足が進んだ場合、現状の生産性・競争力を維持するのが困難です。
また、日本の人口は2008年をピークに減少していることら、就業者の増加は見込めません。つまり、製造業企業が従来の生産性・競争力を維持・向上させるには、業務改善やDXなどの変革が必須なのです。
【働き方改革や労働時間短縮への対応】
働き方改革は、日本政府が推進する労働環境に関する改革です。例として、時間外労働の上限規制や有給休暇取得義務などです。働き方改革の内容は、2019年に改正された労働法で定められており、違反した場合は罰則が課せられます。
製造業企業は、働き方改革への対応が迫られており、労働時間減少に伴う生産性の低下を対処しなければなりません。従来の生産性を確保しつつ、働き方改革へ対応するためには、業務改善による効率化が必要です。
【自社の競争力向上】
近年の製造業は、激しい国際競争にさらされています。例として、かつて多くの国内製造業が進出した中国。今や多くの工業製品を海外へ輸出しており、世界的にも存在感を高めています。
国際競争が激化する昨今では、常に変化し生産性を高め続けなければ、競争の敗者となるでしょう。そのため、製造業企業では業務改善・業務改革による変革が必要なのです。
業務改善の失敗例と改善アイデアとは?
製造業の業務改善では、施策実施後に成果が出ず、失敗に終わるケースもあります。本節では製造業の業務改善で起こりがちな、下記3つの失敗と改善アイデアを紹介します。
・現場から核心に迫る課題を抽出できていない
・改善案が現状の業務を踏まえた内容になっていない
・改善案が現場へ浸透しない
【現場から核心に迫る課題を抽出出来ていない】
1つ目の失敗は業務改善の初期段階、課題の抽出に失敗するケース。一般的には、業務を改善するにあたり、現場の従業員へヒアリングを実施します。
しかし、単にヒアリングを実施するだけでは、生産性向上やQCD最適化などの改善目標につながる、核心的な課題は抽出できません。改善目標につながる重要度の高い課題を導き出すには、業務改善の必要性や何を達成するのかなどの、具体的なイメージを共有することが効果的です。
また、従業員が自発的に改善案を出すケースは低いため、改善提案制度を導入し、課題を抽出しやすい仕組みを構築すると良いでしょう。
【改善案が現状の業務を踏まえた内容になっていない】
2つ目の失敗は、改善案が現状の業務を踏まえた内容になっていないケースです。この状態で業務改善を進めると、成果が出ないばかりか、他の業務へ悪影響を及ぼす恐れがあります。現場の意見を汲み取らず、トップダウンで業務改善を進めた場合に生じやすい失敗です。
こうした失敗を防ぐには、プロジェクトメンバーに現場の理解者を入れることが効果的。プロジェクトの推進には、トップ層のリーダーシップが重要ですが、現場の業務とかけ離れた施策にならないよう注意が必要です。
【改善案が現場へ浸透しない】
3つ目の失敗は、業務改善の実施後、施策が現場へ浸透しないケースです。定着作業を怠ると、すぐに改善前の状態に戻りますし、業務改善に費やした時間・労力が無駄になります。改善施策を現場に定着させるには、下記の3つが有効です。
・実施後にボトムアップで意見を収集
・目標の進捗を全社員で確認
・小さな業務改善から始め、改善を習慣化する
業務改善は、現場の社員への影響も大きいため、当事者意識を持ってもらうことが大切です。まずは小さな業務改善を積み重ね、改善を習慣化すると、現場への定着率が向上するでしょう。
製造業が業務改善を成功させるためのポイントとは?
製造業が業務改善を成功させるには、下記3つのポイントが大切です。
・改善項目に優先順位をつける
・個別最適化に陥らないよう業務のつながりを意識
・経営層と現場社員で連携を取る
上記3つのポイントを、順に紹介します。
【改善項目に優先順位をつける】
1つ目のポイントは、改善項目に優先順位をつけることです。製造業の業務では、さまざまな課題が広範囲に点在しているケースがあります。
ただ、これら全てを一度に改善することは、現実的に不可能です。先述のとおり、業務改善は現場への影響が大きく、定着にも時間がかかります。そのため、どの課題を優先的に改善するのかを、あらかじめ設定することが重要です。
【個別最適化に陥らないよう業務のつながりを意識】
2つ目のポイントは、個別最適化に陥らないよう、業務間のつながりを意識することです。業務改善では、狭い範囲を改善するケースが一般的ですが、製造業の業務は複数の業務が綿密に絡み合っています。業務改善の影響が他の関連業務にも広がるため、業務間のつながりを意識することが重要です。
業務のつながりを掴むには、表やフローチャートを活用し、視覚的に把握するのがおすすめです。
【経営層と現場社員で連携を取る】
3つ目のポイントは、経営層と現場社員で連携を取ることです。業務改善を実行するには、経営層の強力なリーダーシップが欠かせません。
しかし、改善内容に現場の意見を取り入れなければ、業務とかけ離れた施策となり、成果が出ないばかりか、他の業務へ悪影響を及ぼす恐れがあります。業務改善を成功させるには、経営層と現場社員が連携し、改善目標に向けた施策の実施が重要です。
製造業で活用されるシステムの種類と最新動向とは?
製造業では、企業経営や製造業務のためにさまざまなシステムが活用されています。デジタル技術を活用した業務改善が急務とされている状況の中で、システムの導入や入れ替えを検討している企業は多いのではないでしょうか。
今回は、製造業で活用されているシステムの種類と最新動向についてご紹介します。
製造業で用いられているシステムの種類とは?
製造業で活用されているシステムは、基幹システム・業務システム・ERP(統合基幹業務システム)の3つに大きく分けられています。
【基幹システム】
一つ目の基幹システムは、企業を経営する上で必要不可欠なシステムです。具体的には、生産管理、在庫管理、販売管理、会計管理、人事給与などの機能を持ったシステムのことを指します。
製造業向けシステムでは、在庫管理と販売管理の機能も生産管理システムに統合されている場合が多くなっています。生産管理システムは、製造業務における計画、生産、在庫、販売、原価計算などの情報を総合的に管理するシステムであり、製造業が効率的に業務を行うために欠かせない存在だといえるでしょう。
【業務システム】
二つ目の業務システムは、さまざまな業務を円滑に遂行するためのシステムです。具体的には、ドキュメント管理、ペーパーレス、検品、設備管理、顧客管理、グループウェアなどのシステムが挙げられます。企業を経営する上で必要不可欠ではないものの、ムダをなくして効率的に業務を行うために多くの企業で活用されています。
【ERP(統合基幹業務システム)】
最後のERP(統合基幹業務システム)は、上述した基幹システムと業務システムの機能を併せ持ったシステムです。もともとは欧米諸国で活用されていたものが日本にも広がり、大企業を中心に導入が進みました。
非常に高機能なため、使いこなせれば企業全体の効率が大きく向上することが期待できます。一方で、高機能であるがゆえに操作が複雑で使いこなせない、導入コストが高いといったデメリットもあり、中小企業での導入割合はやや低い傾向にあります。
製造業向けシステムのクラウド化が進んでいる
近年、ICT技術の発展に伴って製造業向けシステムのクラウドサービス化がトレンドとなっています。既存のシステムベンダーがクラウド版を新たにリリースするだけでなく、新たなシステムベンダーがクラウド型システムで参入しており、製造業がシステム導入を検討する上での選択肢の一つとして定着してきました。
従来は、自社にサーバーを設置してシステムを運用するオンプレミスが主流でしたが、それに対するクラウドのメリットを下記で紹介致します。
【自社でのメンテナンス業務を最小限にできる】
システムを運用するための維持・管理を行う手間をシステムベンダーに任せることができるため、自社の負担を軽減できます。製造業の中でも、中小企業はIT人材が不足している傾向にあり、効果が大きいでしょう。
【初期費用を安く抑えられる】
従来の製造業向けシステムは初期費用が高価なものが多く、高機能な基幹システムやERPだと数千万円以上かかる場合もあります。クラウドサービスの場合は、サーバーなどのハードウエアの準備が不要であり、料金形態も月額課金制のサービスが多いため、初期費用を安く抑えてシステムを導入できます。
【常に最新のシステムを使用できる】
多くのクラウドサービスでは、システムベンダーによって機能の強化や改善が継続的に行われており、利用者は常に最新のシステムを使用できます。自社で追加費用を払ってカスタマイズを行う必要がないため、時代の変化に合ったシステムを使い続けることができます。
製造業向けシステムがクラウドサービス化することによって、大企業だけでなく中小企業でもシステム導入がしやすくなります。製造業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む上でも、システム導入のハードルを下げるクラウドサービスは有効であり、今後も需要が高まっていくことでしょう。
実際に業務改善に成功した例とは?
本節では実際に業務海瀬に成功した例を紹介致します。
【栄和プレス工業株式会社】
事業の基盤となる生産管理システムは、1987年に三菱電機のオフコンを導入して以来、約30年にわたって改善を重ねてきました。代表取締役の岡安成郎氏は「当社では、オフコンから抽出したデータを一旦データベース(SQLServer)に格納し、それを参照して現品票などを発行する自社開発の検査システム(Access)を運用しています。MBからオフコンに精通したSEが減少傾向にあるという話を聞き、生産管理システムのオープン化を進めるタイミングだと判断しました」と語ります。
メンテナンス性や将来性などを考慮してパッケージの導入を決断。約30年にわたって同社をサポートしてきたMBの提案を踏まえ、「電脳工場」の導入を決めました。
電脳工場の導入により、生産現場が在庫、生産計画、受注数、出荷予定など工場の全体像を把握できるようになりました。生産管理部門の遠藤禎也氏は次のように語ります。
「従来は検品を終えた完成品の個数をオフコンに入力するだけで完成品がどのようなフローを経て工場から出荷されるかあまり意識していませんでしたが、電脳工場の導入によって業務領域が広がり、上流の生産計画から下流の出荷まですべての工程を把握できるようになりました。それによって仕入先とのコミュニケーションが生まれたほか、業務全般に責任感が芽生え、自分自身が成長していることを実感しています」
生産現場で外注加工品や材料の受入入力を行うと、仕入データが自動的に生成されます。これによって生産管理部門で行っていた仕入入力の作業が不要になりました。従来1日2回、生産管理部門が入力していた実績情報も生産現場で即時入力することになり、実績とデータの差異もなくなっています。
出荷入力についても電脳工場の一括入力機能を使うことで売上入力が完了し、大幅な業務効率化を実現しました。
その結果、それまで対応できていなかった仕入先の登録作業などに時間を割けるようになり、さらなる効率化に向けて新しい一歩を踏み出すことができました。
生産管理部門の高橋弘美氏は「生産現場での受入入力により、全体で2割程度の仕事量を削減できました。出荷入力も以前は2日に1回、約30分かけていましたが、現在は5分ほどで終了し、年間50時間の削減を実現しています。生産計画もペーパーレスで作成ができるようになり、納品書や受領書などの紙代も節約できました」と語ります。
さらに、検査システムと電脳工場の連携により、在庫管理業務が効率化されています。仕入先、得意先、出荷先マスターが取引先マスターとして統合されたことで検索も簡単になりました。
【神津精機株式会社】
多品種少量生産を行う神津精機株式会社では、仕様変更やそれに伴う部品の発注内容の変更などが多く、生産管理が煩雑で正確な原価計算ができていないことが課題だったと言います。
当時運用していたシステムだと材料の発注は可能でしたが、それがきちんと納品されたのか、現在の在庫はどれだけあるのかを把握することはできませんでした。そのため、正確なデータを把握することができず、原価管理があいまいになっていたそうです。
また、各部署との連携までをカバーするシステムではなかったため、入力ミスや誤発注もよく発生していました。各部署で部品表などへ入力作業を行うフローだったため、営業担当の入力作業が多く、本来の業務に集中できなかったという課題もあります。
そこで大興電子通信が提供する生産管理システム「rBOM」を導入したところ、これらの課題がすべて解決したと言います。
rBOMでは在庫管理が自動化されるため、どの部署からも常に正確な数字が把握できます。発注管理や納品管理、在庫管理がシステム上で統合されているため、発注した材料がきちんと納品されているのか、その材料はどのくらいの在庫があるのかなどをすぐに把握することが可能です。これにより、納期遅れの危険性が増す部品不足や、キャッシュフローが滞る過剰在庫がなくなったと言います。また、入力作業が最低限でよくなるので、作業の大幅な効率化にもつながっています。
多品種少量生産の悩みである突然の設計変更の際も、rBOMであれば設計を変更すれば部品表も自動で更新されるため、入力作業が単純化されます。システムへの入力や情報の検索、参照が容易になったことで、各部署がそれぞれ専門的な業務に集中できるようになったというメリットもあります。
導入前は営業担当が仕様変更時の製番再入力などを担当していたため作業が雑多でしたが、これがなくなったことで本来の業務である受注拡大に注力できるようになったとのことです。
クラウド型システムの導入を検討してみましょう
業務改善を行うことはかなり高い確率で生産性向上に繋がり、企業の利益を生み出すことに繋がります。クラウド型システムを導入すれば、各生産工程における業務の効率化や可視化、社員同士の情報共有が可能になります。
クラウド型生産管理・在庫管理システム「鉄人くん」は、わかりやすい画面と手厚いサポートで、システムが初めても企業でも使いやすくわかりやすいのが特徴です。製造業が必要とするシステムを網羅しています。一度導入を検討してみてはいかがでしょうか?
また、トライアルキャンペーンも実施していますので、システムの導入を検討してみたいとお考えの方は、こちらからお気軽にお問合せ・ご相談ください。