中小企業の場合、生産管理業務担当者が調達管理業務も兼務しているケースは少なくありません。製品を作るためには原材料を仕入れ、計画通りに納品し、利益を獲得していく必要があります。
そこで、今回は調達管理業務における課題とシステム化の重要性についてみていきましょう。とくに調達業務に課題のある管理者の方は参考にしてみてください。
調達管理業務と生産管理業務の関連性
調達管理業務は製造業において、原材料の仕入れや価格の交渉、仕入れた後のスムーズな各部署との調整、納期の交渉などを行う業務です。
例えば、製品を加工するにあたって原材料を仕入れる必要があるものの、仕入れ先そのものは限られているわけではありません。製品によってはいくつかの仕入れ先候補があったうえで、交渉し上手く納品できるからこそ製品を作ることが可能です。そして、資材関連の様々な業務を担うのが調達管理業務となります。
そのため、製造業においては製品を加工する工程と同様以上に資材の調達は重要な業務だといえます。
それに対して、生産管理業務は工場全体の生産を滞りなく行うために、生産計画から品質の管理まで行います。例えば、上記でもふれた資材の調達から生産を実施した際の製品の在庫や品質までチェックする必要があるため、非常に業務量の多い仕事内容となっています。
企業によっては、調達管理業務と生産管理業務の担当者が別々の場合もあります。そのうえで生産管理業務では、資材調達も業務内容に含んでいる企業が多い点を把握しておきましょう。ちなみに、生産管理業務では資材調達も業務内容に含まれたうえで、加工した製品まで管理する必要があるため、業務内容はより広く業務上の課題も多いといえます。
調達業務における3つの課題
ここでは、資材調達業務に焦点をあて、業務を行う際の3つの課題を詳しくみていきましょう。生産計画に合わせて資材調達を行われるものの、人材不足やスキルの偏り、コストの変動などは常に予測し、企業の生産工程の把握だけでなく、トラブルが発生した場合の対応も合わせて行わなければなりません。
コスト
製造業では、資材を仕入れて加工するというビジネスモデルの企業が多い傾向にあります。その場合、コストは常に考えなければなりません。
例えば、原材料の値段が大きく変動する場合、製品を加工するコストが変わらなくても利益が変わってしまいます。原材料の値段が1月には100万円だったとして、5月には原材料の価格が120万円まで高騰している場合、20%ほど原材料の段階で利益が減少するといえるでしょう。
そのため、仕入れ先を探すだけでなく、原材料の価格の変動を予測しつつ調達業務を行っていく必要があります。
定型業務
見積書や発注書は企業ごとに決まった形があります。そのため、気づけば毎回同じような書類を作成し添付しているだけで効率化できていないといった課題は頭を悩ませる人も多いでしょう。
加えていえば、資材調達だけでなく生産管理なども同様の問題が発生しているケースが考えられます。例えば、日々の業務内容として日用品や消耗品の受発注を行う度に申請書を手書きするなどの場合、管理者だけでなく申請する従業員にも負担が発生します。
そのうえで、管理者がさらにその内容をまとめなければならないため、定型業務の効率化は大きな課題だといえます。
属人化
属人化は中小企業における全ての業務において課題だといえます。例えば、人材が育たず、資材調達業務や生産管理業務などにおいて、1人の人材が複数の役割を兼任していることは少なくありません。
そのため、属人化が進みやすく、突発的に休みなどがあった場合には業務が進まないといった事態となります。加えて、資材調達と生産管理は工場の生産の要ともいえる役目であるため、属人化が進むほど企業にとってはリスクが高くなるといえるでしょう。
3つの課題は、業務上だけでなく企業の経営に大きく関わる問題となるものです。適切な対処ができなければ、企業の経営にダメージを与えることも少なくありません。場合によっては、自社だけでなく他社に迷惑をかけることも想定されます。
調達管理業務をシステム化する意味とメリット
調達管理業務の課題にふれたうえで、ここでは業務をシステム化する意味を詳しくみていきましょう。
前提として、調達管理業務は、ツールなどによってシステム化することが可能です。例えば、上記でふれた定型業務や属人化といった課題だけでなく、品質や在庫まで管理できる可能です。ちなみに、生産管理業務の中に調達まで含まれていることから、生産管理業務をシステム化すれば調達管理業務もある程度自動化することが可能です。
俗人化を防げる
システムを導入した場合、システムの使い方を把握する人材が増えるほど属人化を防ぐこいだうえで、以下のようなメリットが期待できます。
- システムを使った仕入れ予測などによって、ベストなタイミングで仕入れを行うことができる
- 過去の出荷データなどと自動的に比較し、製品の生産数まで算出できる
- 自社の数値もデータ化できるため交渉もスムーズになる
とくに様々な情報を共有できるため、人材育成を行う際もスムーズな育成が可能となるでしょう。
コスト削減が可能
コストには2つの意味があります。時間とお金です。時間の面では、これまでの定型業務をRPAなどによって自動化できるため、人の手が不要になる場面が多くなります。また、在庫などに関しても人がわざわざ数える必要がなくなる点もメリットだといえるでしょう。
そして、お金に関しては、過去の購入履歴などを照らし合わせることができるため、購入のタイミングで適切な資材購入が可能となります。加えて、社内の加工などにおけるロスもシステムで感知できるため、経済的損失を抑えることが可能です。
データ共有がしやすい
システム化することで工場内のあらゆるデータを共有することが可能です。例えば、以下のような項目はメリットにつながるでしょう。
- 工場全体の稼働状況がわかる
- 発注数や受注数がわかる
- 納期、納品予定の日数がわかる
システムの導入によってあらゆる数値がデータ化されます。そのため、これまで以上にスムーズな仕入れ、納品が可能となるだけでなく、データを参照する役割ができれば担当者がいなくても交渉を進めることが可能です。
まとめ
調達管理業務は原材料の仕入れや価格の交渉、納期の交渉、届いた資材の確認などを行う業務です。中小企業などにおいては、生産管理業務と兼任しているケースも多いものの、コストや属人化などの問題を抱えているケースも少なくありません。
しかし、調達管理システムや生産管理システムを導入することで、これまでの課題を一度にクリアできる可能性があります。この場合、自社における課題を明確にしたうえでシステムを導入することがポイントとなるため、システムを導入する際は課題解決を最優先にすることを意識しましょう。