日本の製造業では、システムの導入やオートメーション化が進んでいる企業も一定数存在していることから IT 化が進んでいるように感じられる部分もあります。しかし、オートメーション化が進んでいるのであれば、半数以上製造業の企業が「品質管理などに対して、熟練のスキルが必要」といった回答にはならないはずです。
では、実際に製造業における IT 化は進んでいるのでしょうか。今回は日本の製造業では IT 化が進んでいるのかという視点からみていきます。
日本におけるIT化の現状
政府が第4次産業革命として、製造業における IT 化の定義を唱えているものの、日本の製造業における IT 化は、世界に比べると遅れているといっても過言ではありません。
日本の製造業における課題は大きく分けて以下の3つになります。
- 人材不足
- スキル継承
- ビジネスモデルが古い
どの問題も、システムや AI などといった最新技術を活用した場合には解決できる可能性があります。しかし、現状では、一部の業務を自動化する生産管理システムなどの導入においても遅れているのが現状だといえるでしょう。
技術力に関して日本の企業は、世界から評価されていた時代もあるものの、現状では生産力だけでなく技術力に関しても急速に失われつつあります。特に、日本の企業の99%が中小企業であることを考えた場合、ほとんどの企業が、第4次産業革命の言葉を聞いたことがあったとしても、「自社に必要な変化なのか」さえも見極められていない可能性があるのが現状です。
また、大量生産・大量消費といったものづくりのあり方も世の中の変化に合わせて変わってきています。例えば、物が持つ価値に多くの人は着目しておらず、そのものが持つ付加価値に対して着目するようになりました。自動車なども自分で保有するだけでなく、レンタルやリースで十分と考える消費者も増加傾向にあります。
つまり、製造業における製品作りの結果すらも現場と実際に使用する消費者との間に認識の違いがある可能性も否定できません。もちろん、皮肉を満たして商品を出荷し、消費者や出荷先で売買されることで利益を上げることは可能です。しかし、どのように市場に評価されているのかといった視点が欠けているケースも見受けられるのが日本の製造業だといえます。
IT 化は対抗手段
大手企業や一部の中小企業が生産管理システムの導入やスマートファクトリーを取り入れる理由は、国内の企業だけでなく、世界の企業に対して競争力を失わないための手段であるためです。
日本の製造業に関しては、人材不足が大きな課題となっています。加えて、スキルを継承しようにも、継承する毎に人材が退職してしまう可能性も高く、中小企業においてはスキルだけでなく知識すらも属人化していることも少なくありません。
そのため、今後も生き残るための手段として IT 化に取り組んでいるといえます。また、人間ができることと機械が得意なことははっきりと分かれています。例えば、部品の穴開けなどといった加工業務は、データさえ集計できれば自動化できる業務内容だといえるでしょう。
実際、人間は長時間を同じ作業を続けるほど集中力が下がったうえで、ミスも多くなっていきます。そのため、単純作業を行うのであれば人間ではなく機械に方が適しています。
そして、人為的なミスによる、生産の遅れは中小企業ではありがちです。生産管理システムの導入やオートメーション化が進んでいる場合は、そもそも人材か製品に関わる機会が少ないため、伝達ミスが起こりにくく、情報も誰もがシステムにアクセスすれば回覧できるといった違いがあります。
IT 化は単純に、大企業が取り組んでいる流行りなどではなく、世界中の企業に商品力や生産局で対抗するための手段です。そのため、対抗手段を持たない企業は時間とともに淘汰されていく可能性が高いといえます。
ちなみに、同規模の同業他社が生産管理システムやオートメーション化によって生産性や売上を向上させたとしても、自社の課題に対して慎重に検討しなければ同様の結果を得ることができない点は注意が必要です。
日本におけるIT化の課題
日本においては、基幹システムが古いことから、IT化を取り入れづらいといえます。仮に、取れ入れる場合には、基幹システムを変える必要があるだけでなく、そのコストの高さがネックとなっていることも少なくありません。
生産管理システムはクラウド型から試すことも可能であるものの、全体的な生産効率をアップさせる場合には、基幹システムとの連携が必要となるケースも想定されます。AIやloTなどに関しては、機器そのものを対応できるように変更する、ベンダーと話し合いを重ねるなどの費用以外のコストも考えなければならないのが現状です。
また、コストばかりに目がいくことで、自社の課題に気付いていないケースも少なくありません。例えば、材料の無駄をなくすという目標を掲げても、人為的なミスが多発した場合には、そもそも手順の確認不足が原因であることも想定されます。つまり、経営層が現場の課題を把握しきれていないこともIT化に乗り遅れている理由の1つだといえます。
自社の課題解決がIT化のカギ
あくまでもIT化は、企業課題の解決方法の1つです。データ収集・分析も工程上の問題や動作を把握し、問題を未然に防ぎ、円滑な生産活動を行うための取り組みだといえます。
はっきりいえば、企業課題を解決できるのであればIT化を推進する必要はありません。しかし、現状はIT化以外に有効な手段がないために、「コストをかけてでも自社の課題を解決し、生き残る」対策となっているといえます。
例えば、人材不足やリソース不足が課題だったとしても、企業によって細部が異なります。生産活動におけるすべてのリソースが足りない場合と生産管理における計算業務に手間がかかりすぎている場合では、解決方法は異なるといえるでしょう。
前者はERPやオンプレミス型の生産管理システム、後者はRPAやクラウド型の生産管理システムで解決できます。一度に全ての業務を自動化する必要はありません。徐々に事業家に切り替えていく方法の方が確実性は高いといえます。どのようなシステムを導入するかによっても難易度は変化するものの、自社の課題を明確にすることでより自社のニーズに合った課題解決方法が見つかるといえるでしょう。
まとめ
日本の IT 化は世界と比較した場合、進んでいるとは言いがたい状況にあります。また、多くの企業が一般的に製造業の課題として言われている人材不足や属人化といった課題でつまずいているのも事実だといえるでしょう。
そのうえで、オートメーション化や生産管理システムの導入は、これまでの生産活動の課題を解決する可能性を秘めています。加えて、国内だけでなく世界の企業に対抗するためにも、 IT 化が必要な状況です。
そして、実際の課題を正確に把握したうえで、必要な解決手段を選択していくことが IT 化のカギだといえます。必ずしも高額なコストを払うだけが解決の手段ではないため、様々な手段を調べ、自社の課題と向き合ってみましょう。