製造業は結局5S|物だけでなく情報を見える化する利点と改善事例

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製造業は結局5S|物だけでなく情報を見える化する利点と改善事例

「製造業は結局5S、5Sに始まり5Sに終わる」といわれることがあります。安全も生産性も品質も5Sから始まります。コロナの影響もあり廃業・解散の件数は大幅に増加し、利益率の向上が一層求められる時代になってきました。昔からなじみの深かった5Sも、よりレベルアップしてきています。情報の見える化にともなう5Sも実施されています。情報5Sの利点と実施のポイントを、改善事例とともにご紹介します。

1.5Sとは

5Sは整理・整頓・清掃・清潔・しつけのことを言います。安全に効率的に品質の高い製品をつくるために製造業では、トヨタをはじめとして多くの企業で実施されています。

5Sは、その順番通りに実施することで効果的に進められます。

  1. 整理:必要なものと必要でないものを分け、必要でないものを捨てる
  2. 整頓:整理後、残ったものを見える化して場所を決める
  3. 清掃:整理・整頓後に清掃し、設備をすぐに使えるようにする
  4. 清潔:整理・整頓・清掃を維持する
  5. しつけ:整理・整頓・清掃・清潔を保つ活動をきちんと実施する

2.製造業は結局5Sといわれる理由

「製造業は結局5S、5Sに始まり5Sに終わる」といわれます。なぜ、これほどまでに5Sが重要視されるのでしょうか。作業者・安全・生産性・品質の面から考えてみます。

① 5Sが作業者に与える影響

  • 規律が守られる
  • 探さなくてすむので動作がマニュアル化でき、間違いが減る
  • プライドを持って仕事ができる
  • 割れ窓理論のもとを断つため、精神的に安定する

5Sが実施されている職場は、整然として雑念が入りにくくなっています。そのことで、規律ある行動がうながされます。

参考:割れ窓理論
「割れ窓理論」は、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱し、ニューヨーク市長であるジュリアーニ氏が1994年から実践したことで知られます。窓ガラスが1枚割れるという小さな乱れが次の乱れを生み、そのまま放置していると、街全体が荒廃していくという理論。

 

② 5Sが生産性に与える影響

  • 無駄な作業は整理されているので、必要な作業のみですむ
  • 必要なものを取り出す時間を最短にできるので、トラブル停止が短い
  • 在庫が少なくなったら補充するシステム化で部品欠品による停止がない

5Sが実施されている職場は、物を探す時間、間違いを正す時間を最小限に抑えている職場です。機械の停止は短時間で済み生産性が向上します。

 

③ 5Sが品質に与える影響

  • メンテナンスされた物品を使用することができる
  • 間違いを減らせる
  • 異物が混入しない
  • 似た部品を使って不良品をつくってしまうミスが防げる
  • 原材料が腐敗、劣化しない
  • 虫の発生を防ぐ

5Sが実施されていれば、異物の混入、細菌汚染、虫の発生を抑えることができます。またミスによる不良品も最小限です。

 

④ 5Sが安全に与える影響

  • 必要ないものがチョイ置きされる事故を防ぐ
  • 探しもの作業の発生を防ぎ、集中を切らさない
  • 不安定なものが落ちてこない
  • 足元が乱雑になって転ぶことがない

5Sが実施されている職場は床に物が落ちていません。ものをもとに戻すことが業務の一環となっていますので安全に作業が行えます。

 

5Sは、製造業のすべては5Sの推進の上で成り立つ

3.5S活動の変化

もともと5Sは目に見えるものについて活動するのが中心でしたが、近年では、情報を5Sし、効率化を進める事例も増えてきています。

4.情報の5Sとは

5Sの定義を情報にあてはめると以下のようになります。

  1. 整理:必要な情報と必要でない情報を分け、必要でない情報を捨てる
  2. 整頓:情報を分かりやすく分類しフォルダにわける
  3. 清掃:整理整頓された情報を、すぐに使えるようにする
  4. 清潔:セキュリティ対策を実施する
  5. しつけ:ミスをおこさないシステムにする

情報にも5Sをあてはめることができる

5.情報を5Sすることの利点とは

製造業が体だとすれば、情報は血液やリンパ液のようなものです。各工程がすべてつながっていて、どこかで間違いが発生すると、それ以降の工程すべてが間違ってしまいます。

逆に情報を5Sすれば、すべての工程の巡りがよくなり、モノの5Sよりも広範囲に効果があらわれます。

また情報はかさばらないため、乱雑になっても対応が遅れがちです。そのため5Sの効果が大きくなる場合が多いです。

製造業は情報ですべての工程がつながっている

情報の5Sは広範囲に大きく効果が表れる

6.情報を5Sする5つのポイント

① 同じファイルを複数保管しないシステムにする

同じファイルを複数保管するシチュエーションとして

  • 添付ファイルの保管
  • 古いファイルと新しいファイルがフォルダ違いで混在している
  • 担当者が変更になって新しい置き場所を作成

などがあげられます。

例えば、社内メールに添付ファイルがついてきた場合、受け手は機械的に自分のフォルダーに保管していないでしょうか?同じファイルを複数保管する行為は無駄が多く,リスクの高い行為です。最悪の場合、送信した人数分のファイルが保管され、社内のサーバーに負荷がかかります。

同じファイルを見ることができるのであれば保管場所を提示し、各個人はショートカットで管理するなどの工夫をして、サーバーの負荷を増やさない工夫をしましょう。

またファイル名には日時をつける、ファイルの保管場所をヘッダーやフッダにいれるなど、ファイルの差別化のためにできる工夫をしておきましょう。

 

② 更新されていないファイルの必要性を確認する

保管した時は必要だと思っていたけれど、今は何に必要なのかわからないファイルはありませんか?最終更新日から1年以上経過しているファイルは、必要性を確認すべきです。

1年ではファイル数が多くて対応できないようであれば、最低でも「5年」「3年」経過している不明なファイルは使用している人の有無を確認する必要があります。

 

③ フォルダは、紙のファイルと同様の分類をする

フォルダーわけは、考え方で方法が逆になります。つまり製品品目を最初に分類して製造日を次段階の分類にするのか、製造日によって分類し製造品目を次の段階にするのかでは、まったく違う並びになります。

一般的に情報も紙のファイルも同じルールを適用すると間違いが少なくなります。操作手順書にルールがあれば、それに従いましょう。

 

④煩雑な管理にはソフトを利用する

製造業の場合、生産管理や在庫管理などはデータ数が多く、構成が複雑です。エクセルを使用する方法もありますが、時間をかけて作ってもデータの信頼性に不安が残り、コンピューターの検証に時間をかけることが多いようです。

そのエクセルファイルをつくるのに何時間必要でしょうか、人件費はいくらかかりますか?複雑なところは、外部ソフトを使う方が人件費を考えるとコスト安になる場合が多いものです。また、市販のソフトであれば一般化された情報に落とし込むことができますので、外部査察にも対応しやすくなります。

 

⑤クラウドを活用する

もし社内のハードディスクが、すぐいっぱいになってしまってプログラムが動かなくなるなら、増設を考えるまえにクラウドの検討をおすすめします。

クラウド型のシステムにするとデータは見える化され管理されます。データの整理整頓がしやすく、ブラックボックス化するリスクが少ない方法です。メーカー側でバックアップも行ってくれますし、いわれていたスピードの問題も解決しつつあります。なによりハードの増設に比べ、設備投資が安く済みます。

すでに2021年12月から政府機関では、クラウド・オブ・デフォルトというシステムを導入する場合はクラウド型を第一選択肢にするという方針となっています。

5つのポイントをおさえて、情報を5Sする

 

7.クラウド型システム導入により情報を5Sした改善事例

情報を5Sした改善事例を紹介します。

納期情報を5S|欠品防止を実施したA社の事例

改善前)
A社では、やり忘れや納期間違いを防ぐため、毎朝、受注状況、作業の進捗状況を確認していました。

情報5S:作業の進捗と納期を見える化・システム化

改善後)
クラウド型生産管理システムを導入し、納期管理と請求書や納品書等は、画面を見るだけで一括管理ができるようになりました。

常時確認ができるようになったので、朝まで待たなくても、やり忘れがわかり対応できるようになりました。

また、朝の確認に使っていた時間も作業できるので効率化できたと思います。

在庫情報を5S|残業時間を削減したB社の事例

改善前)
B社は、金属加工業として小ロットでも受注できることが強み。受注にしたがって毎日400点以上の製品を作成しています。動いている製品数が多いので、だれが担当しているかについて覚えられず、管理職が必要に応じて電話で確認していました。
管理職はモノの動きを把握し指示することに追われ、自分たちの仕事が回らず残業時間も多くなりがちでした。

情報5S:なにをつくっているかを情報化し、見える化

改善後)
クラウド型生産管理システムを導入し、システム品物がどういった状態で今どこにあるのか、何日納期なのか、どのくらい遅れているのかなどが新人でもわかるようになりました。

状況の把握や指示出しの時間が必要なくなり、時間外労働が少なくてすんでいます。

受注情報を5S|混乱した作業を整理したC社の事例

改善前)
C社では伝票は手書きで、受注したら最初から書いていました。顧客ごとに保管していたつもりだったのですが、訳が分からなくなってしまっていたのが実情です。

情報5S:受注情報を見える化・システム化

改善後)
クラウド型生産管理システムに受注情報を入力しているので、手書きしなくても受注伝票を作成することができます。

省力化もできましたし、顧客から何をどれくらい受注したかが履歴で残るため、カンでなく実績で材料を用意することができるようになりました。

出納情報を5S|世代交代の準備を始めたD社の事例

D社では、会計はベテラン社員が使い慣れたソフトがありました。その人とっては使いやすいのですが、煩雑で誰かに教えるといっても難しい点がありました。

情報5S:会計を作業の一括管理と連携して見える化・効率化

一括管理と請求書納品書までできるクラウド型システムである鉄人君を少しずつ使い始めています。会計は、そろそろ次の世代に引き継ぎたいと思っているので、一括管理のできるタイプを選びました。

このタイプだと会計作業は印刷だけですむので、世代交代も進むと思っています。

これからは情報を5S|見える化し効率化する

製造業は5Sを向上させることで、安全、生産効率、品質すべてに良い影響が出ます。最近では情報の5Sも盛んです。情報の5Sをすれば、各工程をめぐり良い影響は工場全体に波及します。情報の5Sを実施するには無駄なものを排除する工程が欠かせませんが、クラウド型システムを導入するのが早道です。すでにクラウド型生産管理システムを導入した改善事例の報告もあがっています。いっそうの見える化、効率化を進めるために情報の5Sをおすすめします。

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