製造業全体で人手不足が課題となる一方で、リードタイムの短縮は求められ続けます。この問題に立ち向かう策として、限られたスタッフでできるだけ多く、スピーディーに作業をこなすための業務の効率化を図ることが有効です。
しかしどのような業務・方法で効率化を図ることができるのか、情報収集段階にあるという現場マネージャーも多いでしょう。この記事では、製造の準備段階で保管庫から部品をピッキングする業務に焦点を当て、作業効率化の方法をご紹介します。
ピッキングリストとは?
ピッキングリストとは、ピッキングすべき商品の商品コードや保管場所、数量などが記載された指示書です。基本的には、ピッキング作業員は紙で出力されたピッキングリストを見ながら、商品を集めて回ります。そして、商品の摘み取りが終わるごとに、ピッキングリストに横線を書き込んで確認を行います。
ピッキングリストの使用方法とは?
ピッキングとは、仕入れた部品を一時ストックする保管庫から、製品の組立現場に供給するための部品を集める作業のことです。
納入される部品は製品や工程に合うように分類されているわけではありません。また梱包単位も組立現場に対して適切になっていないため、そのまま作業場に供給するとモノがあふれかえってしまいます。そのため製造現場では、製品ごと・工程ごとに必要な部品を作業ポイントの近くにセッティングしてから、組み立てに取り掛かる必要があるのです。
【ピッキングリストを使用するメリット】
ピッキングリストを使わなくても、納品書があればピッキングは不可能ではありません。納品すべき商品が記載されているため、この書類を見ながらピッキングをすることも可能です。
ただし、納品書にはあくまで納品すべき商品が記載されているだけで、ピッキングを効率化するための工夫は全く施されていません。よって、ピッキングの効率が倉庫の規模や作業員のレベルに依存してしまいます。
一方、ピッキングリストはピッキングの効率を高めるために使われる書類です。たとえば、リストに記載されている商品は保管場所の順番どおりに並んでいます。つまり、同じ場所を往復することなく、最短ルートで商品を集められるということです。
ピッキング効率を下げている主な課題とは?
保管庫から部品をピッキングする業務では、次のような課題が発生しがちです。
【ピッキングの方式が現場に合っていない】
主なピッキング方法には「摘み取り方式」と「種まき方式」の2種類があります。この2つはピッキングの手順が異なるため、部品や供給先となる作業場の数に対して適した方式で行うことが大切です。
しかし方式が現場に適していない場合、ピッキングの時間が不必要にかかってしまうだけでなく、ミスを引き起こしてしまう恐れもあります。
【アナログな方法から抜け出せず、作業に時間がかかる】
ピッキングリストの指示と部品の照合を目視で行うといったアナログな方法で業務を行っているケースです。また、何がどこにあるかが熟練作業者でないと分からず、新人が作業を行う場合に目当ての部品を探すのに時間がかかるといった属人化のケースもあるでしょう。
【目視確認で行う場合にヒューマンエラーが発生する】
目視確認でピッキングを行う場合に、似た部品を取り違えてしまうケースや、ピッキングリストの指示を読み間違えてしまうケースです。間違いに気付くのがピッキング後となると手戻りが発生してしまうでしょう。
ピッキングを効率化するには?
上記で紹介したような課題への対策を行い、業務の効率化を図りましょう。ここでは、取り組みやすい順に、効率化を図る方法を紹介します。
【ピッキングの方式を見直す】
まず取り組みやすいのは、ピッキング方式の見直しと改善です。「摘み取り方式」「種まき方式」の適否はピッキングする部品数や部品を供給する作業場数によって異なります。シチュエーションに対して適した方法となっているかを見直す際に、以下の表を参考にしてみてください。
【QRコード・バーコードとハンディターミナルを用いる】
ピッキングの方式を見直したら、次に行えるのは業務のデジタル化をすることです。取り組みやすい方法として、まずはQRコード・バーコードとハンディターミナルを用いる手法を検討してみましょう。
ピッキングリストにQRコードやバーコードを印刷しておき、ハンディターミナルで読み取って画面に保管場所を表示させます。表示に従って保管場所に移動し、目的の部品をピックアップしたら、部品や保管棚のQRコード・バーコードを読み取ることでリストと部品の照合を行います。
人の目による確認が減り、作業の時間短縮になるだけでなく、ミスの軽減にもつながります。
【デジタルピッキングシステムを導入する】
デジタルピッキングシステムとは、表示機の点灯により必要な部品の位置を知らせるシステムです。人の目で部品の保管場所を探し、部品とリストの指示内容を確認する時間を削減できます。
【倉庫管理システム・在庫管理システムを活用する】
倉庫管理システム・在庫管理システムのピッキング支援機能を活用することで、作業の効率化を図る方法です。システムに、ピッキングリスト発行機能や部品の保管場所を知らせる機能、ピックアップした部品の照合に使用できるデータをハンディターミナルに送信する機能などが搭載されていれば、作業に活用することができます。
ピッキングリストを作成する方法とは?
続いて、ピッキングリストの作成方法を見ていきましょう。
【エクセルを活用する】
ピッキングリストはエクセルで作成できます。枠を設定し、ロケーション番号順に商品を列挙しましょう。そして出荷先ごとに必要数量を入力し、合計値が自動で算出されるように関数を設定します。
出庫量が1以上のところはセルの背景に色が付くように設定するなど、工夫をするとさらに見やすいピッキングリストができます。また、インターネット上で無料のテンプレートなども公開されているため、それらを活用しても良いでしょう。
ただし、エクセルでの作成は手間がかかります。そこで有効なのが次節で紹介する在庫管理システムです。下記のURLでエクセルを使用したピッキングリストの作成手順を見れます。
【在庫管理システムを活用する】
在庫管理システムは、倉庫などの在庫を管理するITツールです。これにピッキングリストの出力機能が備わっていることがあります。
あらかじめピッキングリストの雛型ができているため、エクセルのように見栄えを整えたり関数を設定したりする必要はありません。必要なデータを入力したら、あとは出力ボタンをクリックするだけでピッキングリストを作成できます。システム上で商品の名称や商品コード、ロケーションが紐づけられているため、それらを1つずつ手作業で入力する必要もありません。
さらに、シングルピッキングやトータルピッキングなど、ピッキング形態に合わせたリストを作成できます。どのようなピッキングをするにしても、在庫管理システムはその作業を効率化してくれるでしょう。
多様化するピッキングシステム
ピッキングシステムの種類は、近年ますます増えています。ピッキングした商品をベルトコンベアで運べるような仕組みや、ピッキングするカートにピッキング商品の指示をするカーナビのような画面が付いているものなど、ピッキングはさらに進化しているのです。ここでは、3つのピッキングシステムをご紹介します。
【音声を用いたピッキングシステム】
1つ目が、音声を用いたピッキングシステムです。ハンディターミナルを用いたピッキングシステムを使ったとしても、どうしてもハンディターミナルを持つ手が塞がってしまうという問題は解決しませんでした。そこで、ピッキング指示を音声で行うピッキングシステムが登場しました。
ピッキング担当者が、ヘッドセットを頭につけると機械音声がピッキング指示をしてくれます。それによって、手にリストやハンディターミナルを持たなくとも、ピッキングが可能となります。ハンズフリーになることで、重い物を両手でもったり、割れ物や危険物を丁寧に運んだりできるようになります。
また、リストやハンディターミナルを見る必要がないということで、アイズフリーになります。リストを注視していたために、周りを見ることができず、周囲の人とぶつかってしまうといった危険を避けることができます。
【デジタルピッキングシステム】
2つ目が、デジタルピッキングシステムです。デジタルピッキングシステムとは、商品を保管している棚に、デジタル式の数量表示計を付け、数量表示計のランプなどで、ピッキング指示を出します。
一目で必要な商品がわかるので、初心者でも簡単にピッキングができるだけではなく、リストなどを必要としないハンズフリーでのピッキングができます。たとえば、定番商品をピッキングする場合など、決まった商品を何度もピッキングするときに役に立ちます。
【ロボット化】
3つ目が、ロボット化です。商品を入れた棚を自動的に運ぶロボットを活用することで、人の手を使うことなくピッキングができるようになります。まだ、一般企業に浸透・普及しているとは言えませんが、これからどんどんロボット化が進んでいくかもしれません。
初めてのシステム導入ならクラウド管理システムがお勧め
近年、管理システムはクラウド型がトレンドです。クラウド型サービスは、インターネットを介してクラウド上のサービスを利用する仕組みのことです。在庫管理システムのみならず、多くの業務支援システムのクラウド化が進んでいます。
しかし、クラウド管理システムが自社の業務に最適かどうかは十分な検討が必要です。ここからは、クラウド管理システムのメリットをご紹介します。クラウド型のメリットを把握し、最適な選択肢になるかしっかりと確認しておきましょう。
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低コストで導入できる
自社拠点内やデータセンターにシステムを構築するオンプレミス型と比較したとき、クラウド型は低コストでシステムを運用しやすい特徴があります。オンプレミス型で在庫管理システムを運用する際には、システム開発費用やサーバー構築に約数十万~数百万のコストがかかります。
一方で、クラウド型は、比較的低コストでシステムを利用することが可能です。また、クラウド上のシステムは基本的にサービス事業者によってメンテナンスが行われます。したがって、クラウド型在庫管理システムにはオンプレミス型のシステムで必要な保守運用にかかる費用は必要ありません。
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インターネット環境さえあれば利用できる
クラウド型の管理システムは、インターネットに接続できる環境があれば、場所を問わず在庫状況を把握したり共有したりできます。クラウド上の管理システムにログインするだけで状況を時間・場所を選ばずに把握することでできます。クラウド型は本社と倉庫の距離が離れている場合の運用はもちろん、繁忙期に臨時で拠点を増強した場合など、さまざまな利用シーンに柔軟に対応可能です。
また、クラウド型は仕入先の在庫を確認したいという要望にもスムーズに対応できます。仕入先側にクラウドサービスにアクセスしてもらい、在庫状況を直接確認してもらうことも可能です。仕入先と国内外問わず、工場や倉庫の在庫情報を簡単に共有可能にするのは、インターネットを利用したクラウド型だからこそできるメリットです。
システム導入でピッキングを効率化
リストを用いたピッキングをしている企業は、まず、ハンディー式のピッキングシステムを導入することを検討してみてもいいかもしれません。さらに、商品の入れ替わりが早い棚が多いのであれば、音声式のピッキングシステムや、デジタルピッキングシステムといったピッキングシステムを導入することも検討してみることをおすすめします。現場の作業員の業務効率を上げ、企業に利益をもたらすピッキングシステムの導入をご検討ください。
クラウド型の在庫管理システムの導入を検討してみましょう
適切なピッキングを行うことは企業の利益を生み出すことに繋がりますが、全てを手作業で行うには限界があります。ピッキングリストを作成出来る在庫管理システムを導入すれば、効率的なピッキングを行うことが出来ます。
在庫管理システムを検討するときには、パッケージ型のように提供形態で選ぶ以外にも、業界に特化した機能や自社の業務にマッチした機能が搭載されているかなど、さまざまな視点で製品を選ぶ必要があります。
例えば、製造業専門のクラウド型生産管理・在庫管理システム「鉄人くん」は在庫管理も行えます。クラウド型なのでメーカーとの心理的距離も近く24時間365日のサポート体制を備えています。従来使用していた在庫表も取り込むことができます。専門家によるセキュリティ対策も実施されていますので、安心して使用することができます。一度導入を検討してみてはいかがでしょうか?
IT導入支援事業費補助金制度も利用できるので、在庫管理システムの導入を検討しているのであれば、鉄人くんを選択肢に加えることをおすすめします。また、トライアルキャンペーンも実施していますので、システムの導入を検討してみたいとお考えの方は、こちらからお気軽にお問合せ・ご相談ください。