製造業では在庫管理が重要です。在庫管理システムで煩雑な在庫管理が楽になりそうと思う反面、使いこなせないかもと不安で導入に二の足を踏んでいる方もいるかもしれません。在庫管理システムを使いこなすためには、失敗要因と心理的壁を取り除く必要があります。
この記事では、製造業で在庫管理システムが導入失敗に終わる要因と心理的壁、使いこなすための最優先事項を紹介します。
製造業にとって在庫管理が大切なのはなぜか?
製造業は原材料をより価値の高い製品へ「製造」して利益を得る業態です。
ひとくちに製造業と言っても製造品目は機械、金属・鉄鋼、電子関連部品、化学品、食品、建築・住宅、医薬品などさまざまです。しかし何をつくっているとしても、製造業にとって「もの」は財産です。つまり「もの」を把握する在庫管理は製造業にとって大切なのです。
在庫管理が適正におこなわれれば、在庫が多すぎて無駄になったりもせず、逆に在庫がなく販売のチャンスを逃したりもしません。この状態は、最も利益損失が少なく利益の見通しがとれます。利益の見通しがたてば、事業計画が立てやすくなり経営しやすくなります。
つまり、確実な在庫管理は、経営の安定に寄与するのです。
在庫管理システムで製造業は楽になるが……
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が進み、製造業でもシステム化が進んでいます。在庫管理についてもデジタル化が進み、煩雑な在庫管理が楽になってきています。システムも多数販売され選択の幅も広がりました。
この流れは、大企業だけでなく、中小企業にも波及しています。とくに中小企業では生産性向上IT導入支援事業費補助金制度IT導入補助金 https://www.it-hojo.jp/を使え、導入の動きは加速しています。
しかし在庫管理がシステムの導入には、失敗事例も多く存在します。「在庫管理システム導入に失敗すれば、以前より大変になる」そんな不安を持つ方もいるでしょう。
在庫管理システム導入に失敗する5つの要因
在庫管理システムの導入に失敗しているところは何を間違えたのでしょうか?よくある要因を以下に示しました。逆に要因への対策が十分に行われれば、在庫管理システムを使いこなすことができるのです。
- システム導入が目的になっている
- システム導入に反感を持たれる
- システムが現行の仕事に合わない
- 管理する品目が明確にならない
- 品目・数字があわなくなる
実際はこれらの要因が複合的におこることも多くあります。こうなると訳がわからなくなり、システムが放置されてしまうことも多いようです。こんなことにならないように、これら要因への対策をご紹介しましょう。
要因別在庫管理システムの導入失敗を防ぐ対策
- システム導入が目的になっている
在庫管理システムを導入するだけで、合理化や効率化が進むという幻想は捨てましょう。
システム化は目的ではなく手段です。今までの煩雑でわかりにくかった業務を“精度高く簡単に”実施できるよう効率化するのが目的です。
自社の業務に必要な情報はなにか?どの情報を見える化し、システム化したいのかを想定しておかないと、在庫管理の目標が定まらず、トラブルがおきやすくなります。
- システム導入に反感を持たれる
在庫管理システムを導入するとき、いままで在庫管理を担当していた人の業務に価値がないかのように扱えば、もうそこで導入に失敗しています。
1で説明したように、在庫管理システムは、今までの業務を精度高く効率的におこなうために導入します。現場から担当者を出してもらい意見を収集しましょう。
いままでの業務の流れを在庫管理システムで補う場合をシュミレーションしてもらっておけば、システム導入の強い味方になってくれます。
また在庫管理は煩雑な作業です。在庫品目表なども手書きであっても作成している場合が多いでしょう。そのデータを元に管理すれば現状の分類や管理方法にも合致し管理しやすくなります。
データ移行が楽なシステムを選択すれば、導入作業はグッと楽になるはずです。今まで培った知恵を捨て去る必要はありません。
また、日程をはっきりさせる、進捗を見える化する、質問に丁寧に対応するなどの基本的なマナーも大切にしましょう。
- システムが現行の仕事に合わない
システムが現行の仕事に合わないトラブルは案外あります。必要だけれど見過ごされている仕様がないかどうか、システム導入前の確認は複数でおこないましょう。
心配な作業があれば、詳細についてメーカーと検討する必要があるでしょう。できれば電話対応があるほうが、システムに慣れない場合はやりやすいと思います。
- 管理する品目が明確にならない
在庫管理システムの導入時には、原材料、仕掛け品、外製品、製品、消耗品のすべての在庫をはじめから運用するのは至難の業です。ある飲料メーカーの工場では在庫として取り扱う品目が4000品目を超えました。そうなるとシステムに振り回されてしまい、すべてがうまく回りません。システムになれるまでは、もっとも緊急性の高いものだけを運用することをおすすめします。
たとえば、以下のような最優先品目の選定方法があります。自社に会う方法で始めましょう。
例)最優先項目の選定方法
製品、原材料のみ
1つの製品のみ
短期消耗品のみ
取引先を絞る
運用に慣れてきたら、運用の幅を広げます。運用の幅を広げるタイミングは運用開始時には設定しておくほうが、やりやすいようです。
- 品目・数字があわなくなる
在庫管理には数値間違いがつきものです。いつかどこかで数字があわなくなると考え、定期的な棚卸を実施する仕組みは必須です。
また、入出庫処理をしなければ、入出庫作業ができないなどの仕組みを使った入力忘れ防止。簡単なメモ熟練者が一括して処理するなどの入力ミス防止などの間違い防止策を立てましょう。
在庫管理システムを使いこなすための最優先事項
いままで示した要因を防ぐために、最優先でおこなうべきことがあります。それは現状分析とリスク予知です。
システムの導入失敗の要因も導入の前に現状を見える化すれば、ある程度対策がたてられます。
自社の業務に必要な情報はなにか?どの情報を見える化し、システム化したいのかを想定し在庫管理の目標を決めておけば、トラブルが発生した際にも対策がたてやすくなります。
発生しやすい心理的壁についても想定しておきましょう。
要因別の対策をはばむ心理的壁とは
在庫管理システムの導入失敗を防ぐために、知っておきたいのが心理的壁です。心理的壁は要因別の対策を妨害します。これらの壁は気づかないことには、どんどん問題が大きくなる厄介な壁です。小さなうちに取り除きましょう。
ヒーローの壁
システム導入担当者が、その役割を誇っている場合、ヒーローの壁に阻まれることがあります。自分が主人公であり「自分が」何とかしなければと思いすぎている場合、他の介入を嫌う傾向を持つことがあります。なんでも自分で解決しようと意気込んでしまうのです。
心配して声をかけても「大丈夫です」としか答えません。こうなると誰も手が出せなくなります。
システム導入は企業としておこなう事業です。チーム制にして進捗を把握できるようにし、できるだけ権限を集中させない工夫が必要です。
また、想定外のトラブルは、メーカーに協力してもらえば解決が早いものです。クラウド型のシステムなら常にメーカーとのやり取りが発生しますから、相談もしやすく問題が大きくなるのを防げます。トラブル発生時にいつでも対応してくれるメーカーならいっそう安心でしょう。
足し算改善の壁
改善は素晴らしいことですが、足し算の改善をしすぎて逆に問題の本質が見えなくなることがあります。これは、仕事熱心の裏返しでもあります。
特に導入時はシステムの取り扱いが未熟なまま、マニュアルを作って新しい何かを足そうとしがちです。また、うまくいかなくなって何かを足す。そうしていくと、どんどんわからなくなります。足し算思考の壁に阻まれたときは、いったん現状を見直す必要がありそうです。
改善を付け足さずに、土台から見直すほうが案外打開できることも多いものです。
差別化の壁
システムを導入している担当者と、使用者の間には「あの人は私とは違う」という意識の壁ができることがあります。
「システムがわかる・わからない」「あたまがいい・わるい」「使う人・使われる人」など、心理的に差別化する壁ができてしまうと、伝わるべきものが伝わらなくなります。
また、そうなると被害者意識も強くなることが多いようです。
自分は差別化していないと思っていても、充分に注意しましょう。バカにされたと受け取られてしまわないよう使用する言葉に気をつける、わからないことに共感するなど歩み寄りが必要です。
一発解消の壁
問題は細分化すると解決しやすくなるものです。トラブルが発生した時思いつくことをすべて改善したい気持ちになると思いますが、ひとつずつ検証しながら進めることをおすすめします。
なぜなら発生している問題が解決したとしても、なにが問題なのかが見えなくなってしまうからです。逆に、今後変更したところが問題をおこすかもしれません。トラブルの一発解消を狙う気持ちは、今後のシステムの運用に立ちはだかる壁になります。
手のつけられない問題も細分化すると解決できます。トラブルがおきたときこそシステムと業務を深ぼりする機会にしましょう。
製造業は在庫管理システムで楽になります。システム化すれば、在庫が見える化され見通しがつくためです。使いこなすためには自社の業務を振り返り、何をシステム化するか、失敗要因は何かを把握してからシステム導入を実施すると使いこなしやすくなります。その際には心理的壁の存在を意識すると、必要以上の苦労をせずに済むでしょう。
例えば、製造業専門のクラウド型生産管理・在庫管理システム「鉄人くん」は在庫管理も行えます。クラウド型なのでメーカーとの心理的距離も近く24時間365日のサポート体制を備えています。従来使用していた在庫表も取り込むことができます。専門家によるセキュリティ対策も実施されていますので、安心して使用することができます。一度導入を検討してみてはいかがでしょうか?
IT導入支援事業費補助金制度も利用できるので、在庫管理システムの導入を検討しているのであれば、鉄人くんを選択肢に加えることをおすすめします。また、トライアルキャンペーンも実施していますので、システムの導入を検討してみたいとお考えの方は、こちらからお気軽にお問合せ・ご相談ください。