生産管理システムは生産の効率化・見える化に欠かせないツールです。生産管理システムから製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が始まります。でも、コストを考えると、自作したい人もいるでしょう。生産管理システムは、シンプルなものであれば自作することもできます。
自作するには計画が大切です。この記事では、生産管理システム自作のポイントをご紹介します。ポイントをおさえて、自作生産管理システムを有効活用しましょう。
生産管理システムは製造業DXの始まり
デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を知っていますか?令和3年度の情報通信白書によると以下のような意味です。
(1)デジタル・トランスフォーメーションの定義
そもそも「デジタル・トランスフォーメーション」という概念は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された。教授の定義によると、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」とされている3。その後、平成30年12月に経済産業省が公表した「DX推進ガイドライン」4において、デジタル・トランスフォーメーションを、抽象的かつ世の中全般の大きな動きを示す考え方から進めて、企業が取り組むべきものと示した。
現在、世の中で使われている「デジタル・トランスフォーメーション」の定義は厳密には一致しておらず5、使い方も人や場面によってまちまちであるが、本白書における「デジタル・トランスフォーメーション」の定義は、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」6(令和2年7月17日閣議決定)におけるものを踏襲することとする。
Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
引用:総務省|令和3年版 情報通信白書|デジタル・トランスフォーメーションの定義 (soumu.go.jp)
生産管理システムは製造業分野ではDXの基盤になるものです。製造業の複雑な工程をシステムによって見える化すれば、自社の強みや弱点が明らかになり、これから、何をすべきかがはっきりします。そして、改善効果も見える化され、競争上の優位性につなげていけるのです。
自作生産管理システムとは?何を自作すればいいのか?
自作の生産管理システムという名称を使ってシステムを自作する場合、一般的には生産計画と工程進捗管理について、システムを自作することが多いようです。しかし、生産管理には在庫の管理や図面の管理、使用する部品や資材のコード管理も欠かせません。できれば、それぞれをシステム化しリンクさせれば労力は、ぐっと減ります。
生産計画
生産計画は、長期的な計画と中期的な計画、そして工程ごとの生産計画に別れます。それぞれは関連しています。
まず、市場やユーザーの動向から生産数と生産品目を決定します。そして、原材料の供給予定や在庫を加味し、製品の製造順序を平坦化したものを見える化します。
長期的計画
長期的な計画は、大まかな製造品目と大きな点検整備など、6ヵ月、1年、3年など大きな周期の予定を入れて作成します。点検整備やキャリブレーションの予定、納期に時間がかかる材料や部品調達、人員配置計画などに必要です。発注も長期的計画で予定しますが、実際の発注は、中期的計画が決定してから行われることが多いようです。
中期的計画
ほぼ確定された品目、生産順、生産量、出荷予定日、人員配置、出荷予定日などを要件に作成します。発注、生産準備、試験準備などに必要です。
工程ごとの生産計画
工程ごとに設定する細かい生産計画です。原材料の品目やロット番号は何を使うのかなど、生産の詳細について計画されます。必要な項目は製造品目、工程ごとに異なりますが、生産品目、人員、納期などの情報が入ります。
工程ごとの生産計画は、日ごとやロットごと、バルクごとに作ることが多いようです。この工程ごとの生産計画のみを「生産計画」という場合もあり、自作の場合、ここだけをシステム化することもできます。
工程進捗管理
工程進捗管理は、製品ごとや日程ごとに作成されます。工程が当初予定しているとおりに動いているかを確認します。自作でなく販売されているシステムであれば、各製造装置の稼働状況をリンクさせて、見える化することも多いようです。また、ガントチャートなど、どこまで作業が進んだかを見える化できれば、なお使いやすいでしょう。
在庫の管理
製造をおこなうためには、材料、原料、部品、梱包材の在庫を管理する必要があります。これらは、ひとつ欠けても生産ができなくなります。在庫管理作業は煩雑なうえリスクが多く、在庫不足で生産が停止しないようにシステム化に向いています。
図面の管理
製造品目の図面は、生産計画通りの品目の最新版でなくてはなりません。目視でわからない材料の配合の違いについても、図面で管理し、ミスなく進める必要があります。これらについても製品によってチェックシートが立ち上がるシステムであれば、人的ミスのリスクが下がります。
使用材料や資材の刷番管理
キャップや容器、梱包材料のデザインも刷番を管理する必要があります。ひとつの製品には、多くの刷番管理の必要な材料が必要です。これについても、図面の管理と同様に品目によってチェックシートが立ち上がると、わかりやすいシステム化ができるでしょう。
生産管理システムを自作する方法
生産管理システムを自作する方法にもいろいろあります。それぞれの方法について、難易度とともに説明しましょう。
用意されたテンプレートを使用してつくる……難易度中
インターネット上には生産管理システムのテンプレートを無料で提供している会社が、いくつかあります。一般的なテンプレートなので、自社の目的にあえば使えばいいでしょう。
ただし、大きな変更にはリスクが伴います。自分が作っていないシステムは、思考の方向性わからなくなってしまうことがあるかもしれません。
最初から自作する……難易度高
自社にあったプログラムを最初から作る方法です。この方法でも用意されたテンプレートを参考にすることもできます。思った仕様でシステムが作れるのが特徴です。
生産管理システムの自作に必要なもの
生産管理システムを自作するのなら、いくつかクリアしたい条件があります。そして、条件を一人に負担させず、複数人のスキルをかけあわせて条件を満たすことをおすすめします。そのほうが、かたよらず、多くの人のニーズを満たしたシステムになります。
- エクセルスキル
エクセルのスキルは最低限必要です。マクロを使えば、少ない入力で多くののデータを制御できます。
- 生産工程への習熟
工程ごとに、何を変数とするのか、チェック項目は何にすべきなのかを知る必要があります。このため、生産管理システムを自作する場合、各工程から代表者を出してチームを編成する方法もとられます。
- 教育、マニュアル化スキル
できあがったシステムは、誰もが同じように使えるようにしなければなりません。作業をマニュアル化し、教育する必要があります。
- 作業時間
システムを作るのには、ある程度時間を必要とします。その作業時間の分、人件費がかかります。
生産管理システム自作のステップ
生産管理システムを自作するステップをご紹介します。生産管理システムを自作するステップでは、計画と設計が最も大事です。
1.計画
作成するシステムで何がしたいかを設定します。
事業所で何を製造しているのか、相手は消費者なのか、企業なのか。などによっても、求められる生産管理システムの内容は変わります。
最初に①誰が困っているのか?②何に困っているのか?③どんな状態を求めているのか?を、はっきりさせましょう。
そして、どのシステムが必要かを、考えます。すべてのシステムが連携するのが理想的ですが、最初はあまり無理をしないほうがいいでしょう。自作のシステムを作成する際は、ひとつひとつのシステムを単独で動かすことを目標にすると、後々のメンテナンスも楽でやりやすいはずです。
また、コストについても考慮して計画しましょう。無料を目指すあまり、人件費などのコストが割高になれば、元も子もありません。
2.設計
どんな設計にするのかについて、イメージから具体案を作成します。無料で配布しているテンプレートを印刷して、それに書き込んでも、わかりやすいと思います。今まで使用していたシステムがあるなら利用できるところは利用しましょう。
3.構築
実際にシステムを作る段階です。
4.試用
だいたいのシステムの流れができたら、実際にダミーデータを用いて、使ってもらいます。不具合や希望をここで確認します。
5.手直し
試用で出た不具合や希望を踏まえて、手直しを行います。その後、また試用し、問題点をつぶします。
そして、問題がなくなるまで、試用→手直し→試用のサイクルを繰り返します。
6.マニュアル化
システムが運用できるように、マニュアルを作成します。
7.教育
作成したマニュアルを使って、作業者に教育します。
8.本運用・不具合対応
本運用に移ります。本運用になっても不具合は出てくるので随時対応し、システムをブラッシュアップしていきます。
9.次世代教育
順調に運用できるようになったら、メンテナンス対応のできる人員を増やし、システム作成者が休んでも大丈夫な状態まで持っていきます。
システムが動き出しても、プログラムのバージョンアップや製造工程の更新など、システムを変更する必要があります。そのたびに、システムの検証が必要です。
複数人ができるようになっておかなければ、生産管理システムが安定せず、利用価値が低下してしまいます。
生産管理システムを自作するときの注意点
チームを作る
システム制作、試用は各工程のメンバーで構成されたチームを作った方が、バランスよく行き届いたシステムを作成できます。
ログデータを保管する
一度使わないと決めた方向性が、後々必要になることがあります。一から作成しなおすより、保管していたシステムログデータを使う方が時短になります。何があるかわかりません。ログデータは保存しておきましょう。
文書化する
使用方法などは文書化します。口伝えでは大切なことが抜ける危険があります。マニュアルはぜひ文書化しましょう。
本当に自作ソフトは割安なのか
自作生産管理システムを作成する際のステップを説明してきました。
ここでひとつ疑問が出ませんか?それは、自作ソフトは、本当に割安なのかということです。
システム構築ができる社員は、たいてい優秀な人材です。その人材の作業時間を使って構築したシステムは、実は、人件費が高額なものにはならないかは、客観的に考えてから自作システムの構築をスタートさせましょう。
自作生産管理システムを検討するとき、最も確認してほしいこと
自作生産管理システムを計画するとき、最も確認してほしいことは「自作ソフトは割安になるのか」です。
市販のシステムと、自作したシステムは一見自作システムのほうが割安に見えます。しかし、そのシステムを構築する人材の人件費の視点が抜けていないでしょうか?
どんな優秀な人材でも、エキスパートの集まっているシステム開発のプロよりは、システム構築に時間がかかるでしょう。
その点も考慮して、自作生産管理システムの計画を立案してください。
まとめ
生産管理システムは、製造業のDXに欠かせない存在です。ぜひ導入をおすすめします。コスト面に不安があるのなら自作という手を使いたいかもしれません。しっかり計画し、ステップをおさえれば自作の生産管理システムは可能です。しかし、自作の生産管理システムは、優秀な人材の人件費をつぎ込みます。市販の生産管理システムと比べて、コストの面もしっかり考慮してください。
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