製造業や販売業を行う企業にとって、棚卸は当たり前のように行われる業務のひとつです。しかし、当たり前になってしまっているからこそ、旧態依然としたやり方が残っているケースが殆どでしょう。
インターネットの普及やIT技術の進化もあり、現在の経営判断にはスピードが重要な意味を持っています。そして、迅速な経営判断をするには、在庫数の把握も欠かせない要件です。そこで今回は、効率的な棚卸の実現に欠かせない棚卸表の種類、作成のメリット、作成方法についてお伝えします。
棚卸とは?
棚卸とは、社内や倉庫、工場に存在する資産の数量、価値の確認作業を指すものです。仕入販売を行う企業であれば販売する商品を数えますが、製造業の場合は完成品のほか、仕掛品や原材料といった製造途中のものも資産として数えます。
棚卸の実施により自社が持つ資産を集計すれば、正確な利益を算出できるとともに適切な在庫管理が可能となります。また、在庫品に傷や汚れがないかの確認にも棚卸は欠かせません。実物は傷や汚れがあって商品として提供できる状態ではないのに、帳簿上では在庫としてカウントされているといったような、実在庫と帳簿在庫の差異を見るうえでも必須の業務です。
なお、商品や原材料など以外に社内で使用する備品や機材、消耗品なども別途棚卸する場合がありますが、これらの管理は在庫管理ではなく物品管理になります。
棚卸表とは?
棚卸表とは、文字どおり棚卸を行った結果を記載するための表です。決算や確定申告にも必要となる重要な書類で、青色申告の場合は7年間、白色申告の場合は5年間(どちらもその事業年度の確定申告書提出期限の翌日から起算)の保存が義務付けられています。
また、電子帳簿保存法により、電子データによる保存は認められていますが、スキャナによる保存は認められていません。さらにマイクロフィルムによる保存も、5年間は撮影による保存が認められていないため注意が必要です。
帳簿棚卸に関しては入出庫があるたびに行うため、特に棚卸表を作成するタイミングは決められていません。実地棚卸は半期に1回の企業もあれば毎月行っている企業もあります。ただし、棚卸表は確定申告時に必要なため、最低でも年に1回は行い、そのタイミングで棚卸表の作成を行います。
棚卸表に記載する主な項目とは?
棚卸表は確定申告に必要な書類ではあるものの、正式なフォーマットはないため、手書きやエクセル、在庫管理システムを使って作成しても問題ありません。ただし正確な利益の把握を行ううえで、次の項目は記載する必要があります。
・棚卸を実施した日
・商品番号・コード
・商品・製品(原材料)名
・数量
・商品・製品(原材料)単価
・商品・製品(原材料)金額
・商品・製品(原材料)の状態
棚卸表を作成するメリットとは?
棚卸表の作成を適切に行うことで、次のようなメリットが考えられます。
【正確な利益計算が可能になる】
定期的に棚卸表を作成すれば、実在庫と帳簿在庫のズレが起こりにくくなります。その結果、常に実在庫数の把握ができ、正確な利益計算が可能になります。
また、実在庫と帳簿在庫にズレがあると修正が必要になり、タイムロスが生まれ迅速な経営判断にも影響が出てしまうでしょう。そうした意味でも正確な棚卸表の作成は、迅速な経営判断にもつながります。
【適切な在庫管理が可能になる】
棚卸表がないとリアルタイムでの在庫数把握が難しくなります。その結果、無駄に発注をしたり、欠品に気づかなかったりといったミスも生まれやすくなるでしょう。棚卸表を作成し、常に管理を行っていれば、そうしたミスが減り、適切な在庫管理が可能になります。
在庫があることは決して悪いことではありません。販売のチャンスに向けて、スタンバイできるというメリットもあります。ただし、在庫を過剰に抱えることはスペースを取る=倉庫代もかかることになります。だからこそ定期的に棚卸しをして、在庫を管理することは企業の利益としても重要なのです。
【販売機会の損失防止に繋がる】
適切な在庫管理が実現すれば、繁忙期に売るべき商品が欠品するリスクが軽減します。また、繁忙期が近づいた時点で、早めに発注を行うといった判断も可能です。これにより、販売機会を逸することによる損失も最小限に抑えられます。
棚卸の方法とは?
棚卸し=数量を数えることですが、いくつかの方法があります。下記で詳しく解説します。
【実地棚卸し】
一般的に言われる棚卸しが、実地棚卸しでしょう。店舗や倉庫にある製品をカウントし、その品質をチェックします。あらかじめ、棚卸しの日時を設定して、棚卸しに挑みます。その結果は従業員により、棚卸し表に記載され、管理者に回収されます。
特に技術を必要としない業務のため、アルバイトやパートでも参画可能であることが経営者サイドのメリットではあります。
【帳簿棚卸し】
帳簿や専門のソフトウェアを用いて、在庫数を管理することを指します。ただし、実地と帳簿で在庫数が合わなくなってくることもよくあります。原因はさまざまであり、それを解明することも求められます。
現場の人間の単なる記載ミスか、それとも自社や業者側の発注数のミスなのかを調査する必要があります。実地棚卸しとは異なり、アルバイトやパートには任せられない領域となります。小売業の場合は、消費者による万引きなどの被害も考えられるため、管理がとても難しくなります。
棚卸しの種類とは?
棚卸しの種類について、下記に解説します。
・期首棚卸高
会計年度の開始日にあった製品の総額のことを指します。
・期末棚卸高
会計年度末にある製品の総額を言います。
売上総利益は、売上高から売上原価を差し引くことで計算します。それを算出するために、経営者サイドは棚卸しにより期首棚卸高と期末棚卸高を把握することが重要となります。在庫を把握することで経営状態も把握することができるので、経営者サイドにはとても意味のある業務であり、労働者サイドにとっても経営の一助を担う、重要な業務と言えるでしょう。
棚卸表の作成方法とは?
実際に棚卸表の作成方法について、方法別に説明します。
【手書きで作成する場合】
手書きで作成する場合、帳簿棚卸に関しては、入出庫伝票をもとに都度記載します。また、実地棚卸が行われた際は、それぞれの商品ごとに棚卸表を作成して集計し、さらに全体の棚卸表を作成します。この時点で不良在庫や実在庫と帳簿在庫の差異のすり合わせを行います。
最もシンプルなやり方であり、誰でもできるのがメリットですが、計算ミスが起きやすいうえ、作成の手間がかかるのがデメリットです。
【エクセルを使って作成する場合】
エクセルを使って作成する場合、棚卸表のテンプレートを使うのがよいでしょう。基本は在庫数を手入力しますが、システム導入により入出庫伝票がデジタル化されていて、CSVで取り込みができるようであれば関数やマクロを使って自動入力も可能です。
また、実地棚卸もモバイルやタブレットで行えるシステムがあり、入出庫伝票が同様にCSVでの取り込みが可能であれば帳簿棚卸と同じように作成できます。関数やマクロを使った自動入力やCSVの取り込みを実施すれば、手書きに比べて効率的な棚卸が実現しますが、数値入力を手作業で行う場合にはミスが起こる可能性もあり、手書きからの劇的な効率化は望めません。
エクセルで棚卸表を作る方法とは?
棚卸表には決まったフォーマットはないので、使いやすい棚卸表を自分で作成することが出来ます。ただし、確定申告で使う棚卸表を自分で作成する場合は担当の税理士事務所にどの項目が必要なのか必ず確認するようにしましょう。
棚卸表には決まったフォーマットはないので、使いやすい棚卸表を自分で作成することが出来ます。ただし、確定申告で使う棚卸表を自分で作成する場合は担当の税理士事務所にどの項目が必要なのか必ず確認するようにしましょう。
以下では、在庫の棚卸表の作り方についてご説明します。
任意のセルに『タイトル(例:棚卸表)』や『棚卸実施日』等についての情報を入力します。
棚卸表では「商品番号」「品名」「購入単価」「在庫数」「総額」「担当者」等の項目を使います。棚卸をする商品や物品に応じて項目を変更しましょう。
【任意のセル(例:A3セルからF3セル)】を選択し、『必要な項目名』を入力します。
次に、表に罫線を設定します。①【表全体(例:A3セルからF18セル)】を選択し、②「表」の上で【右クリック】します。③「罫線」の【▼】、④【格子】の順に選択します。
表にデータを入力します。次に入力する数式が合っているかどうか確認するためなので、仮のデータでも構いません。
A4セルからD4セルに『任意のデータ』を入力します。
次に、総額のセルに計算式を入力します。購入単価と在庫数をかけて総額を求めるので、【E4セル】を選択して、『=C4*D4』と入力し、Enterを押します。
次に、入力した計算式をオートフィルでコピーします。【数式を入力したセル(例:E4セル)】を選択し、セルの右下にある「■(フィルハンドル)」を下方向に【ドラッグ】します。
これで、棚卸表が完成しました。
システムを使って棚卸表を作成する方法とは?
在庫管理システムを活用した棚卸表の作成は、手入力の作業をなくすことができるため、手書きやエクセルに比べ大幅な効率化が可能です。また、売上仕入管理システムと連動できれば、自動で在庫数が反映されるため計算ミスが起こる可能性が低減されるうえ、複数人で同時に作業を行うことも可能になります。
製造業にとって在庫管理は非常に重要な業務です。在庫管理が煩雑になると、コストがかかり企業経営に深刻なダメージを与える可能性があるため、紙の管理表を使った人手による管理では厳しいでしょう。そのため、多くの企業がクラウド型の在庫管理システムを導入しているのが現状です。
クラウド型在庫管理システムのメリットとは?
低コストでの導入が可能なため、近年主流となりつつあるクラウド型在庫管理システム。サーバ環境の向上による高いセキュリティ性の実現もあいまって、そのシェアを拡大しています。クラウド型在庫管理システムは他の導入形態とは違い、どのようなメリットがあるのかを解説していきます。
【短期間かつ低コストで導入可能】
クラウド型在庫管理システムは、システムの開発やインフラ調達が必要ないため、短期間での導入が可能となります。また、システム開発をすると初期費用が数十万円〜数百万と高額になります。それに対してクラウド型システムの導入は初期費用が無料〜数万円とコストが抑えることが可能です。
【リアルタイム性の高い監視】
在庫管理の問題点は検品から管理表へのデータ反映時にタイムラグが生じ、現状と在庫データに差異が生じることです。クラウド型在庫管理システムの導入でリアルタイム性が高くなり、信頼性の高い在庫管理データを社内で共有できます。また、そのデータをもとに安心して納期の回答が行えるので、在庫を確認する労力や時間をかけずに済むでしょう
【遠隔で利用可能】
クラウド型在庫管理システムはネットワークを利用するため、複数拠点での在庫情報の共有がしやすいです。そのため、離れた場所に複数ある支店や倉庫の在庫も管理できます。離れた場所の在庫を管理できると倉庫の在庫状況を毎日メールや日報などで送信する必要がないと言うメリットが生まれます。タブレットやスマートフォンなどのマルチデバイスに対応していれば、いつでも在庫を確認できるでしょう。
【サーバー管理が不要になる】
クラウド型在庫管理システムはインターネット環境があれば利用でき、サーバの設置が必要ありません。そのためサーバを管理する必要がなく、自社に情報システムがなくても導入が可能です。さらに、サーバ管理もシステムの販売会社が行うため、従業員にかかる負担を抑えて利用することができます。
また、販売会社が提供するサーバはセキュリティの高いものが以前より増えており、オンプレミス型のような自社管理下のサーバでないとセキュリティリスクが高いとは言えなくなっています。
【拡張性が高い】
クラウド型在庫管理システムは管理する在庫の数が増加しても、料金プランがいくつか提供されているためシステムの拡張が容易です。オンプレミス型ほど自社にフィットした完璧なカスタマイズはできなくとも、パッケージ型よりも高い拡張性を持ちます。
無料の在庫管理ソフトは機能が限定されているものがほとんどです。有料版への導線を作っているケースがほとんどになので、機能を絞ったクラウド型在庫管理システムを低コストで導入して様子を見るのが得策です。
クラウド型の在庫管理システムの導入を検討してみましょう
適切な在庫管理を行うことは企業の利益を生み出すことに繋がりますが、全てを手作業で行うには限界があります。在庫管理システムを導入することで、業務を効率化して予測を立てる事が可能となり、コストの削減に繋がります。
在庫管理システムを検討するときには、今回着目したクラウド型のように提供形態で選ぶ以外にも、業界に特化した機能や自社の業務にマッチした機能が搭載されているかなど、さまざまな視点で製品を選ぶ必要があります。
【システムを活用した棚卸表作成で迅速な経営判断を実現】
迅速な経営判断を行うためには、リアルタイムでの正確な利益の把握が欠かせません。棚卸は単に適切な在庫管理を実現できるというだけではなく、経営の意思決定を支えるという重要な役割を果たしていると言えるのです。そのためにも、ミスを減らし、効率的に棚卸を行い、その結果を棚卸表で迅速に確認できるようにしなくてはなりません。
棚卸表の作成を効率化する方法として、エクセルを使っている企業も多いかもしれませんが、商品数が多いと管理が煩雑になるうえ、ミスも起こりやすくデメリットが多いのが現状です。そこでおすすめしたいのが、在庫管理システムの活用です。リアルタイムでの在庫数確認が可能になるうえ、計算ミスも起こりにくいため、正しい経営判断にも大きく貢献します。
在庫管理・棚卸なら「鉄人くん」がおすすめ
最近はクラウドベースのサービスが増えており、初期費用や毎月の利用料金も非常に安価になっています。また、多くの在庫管理ソフトが無料版や無料トライアル期間を用意していますので、まず無料で試した後、自社に向いていると判断できたら有料版にアップデートするというのもよいでしょう。
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