モノとモノを締結するのに使われるねじやボルトは、ねじを回して締め付けた際に発生する締結力によって締め付けの強度が変わります。規格のねじには、締め付けトルクや強度が決められています。
今回は、ボルトやナットをしめるレンチの使用時に必要な回転力や、ペットボトルのキャップをしめる時の回転力など、物体を回転させる力の「トルク」について紹介します。
トルクとは
トルク(T)とは、力学において、ある固定された回転軸を中心にはたらく、回転軸の周りの力のモーメントのことで、ねじりの強さともいわれています。
ねじにおいては、ねじを回して締め付けたときに発生する締め付け力のことで、「締め付けトルク」といわれています。
例えば、スパナを使ったねじを回す時の力の掛かり方は、テコの原理と同じで、手を掛ける位置がねじの中心から、より離れている方がスパナを回しやすくなります。
つまり、回す力であるトルク(T)の大きさは、加える力(P)が大きく、また、ねじの中心から力を加える力点(A)が離れているほど、大きな力が加わることになります。
この要素によって、トルク(T)は、加える力(P)とスパナなど使用する工具の長さ(A)を乗じたもので、
トルク「T」=加える力「P」×長さ「A」
という公式になります。
トルクの単位
トルクの単位は、従来「kgf・m」や「kgf・cm」と表していましたが、1993年に施工された新計量法により、SI単位(ISO国際規格)への移行が義務づけられ、力の単位がN(ニュートン)となり、現在では「N・m」がトルクの単位となります。
kgf・m/kgf・cm
質量の単位である:kg(キログラム)に、加える力:Force(フォース)が合わさり、物体にかかる力を表す単位「kgf」となります。
その力「kgf」に、長さの単位である:m(メートル)やcm(センチメートル)を乗じるという意味で、トルクの単位が「kgf・m」や「kgf・cm」となります。
N・m/N・cm
1993年に施工された新計量法で、力の単位を表す単位がSI単位のN(ニュートン)に統一されたことにより、力を表す単位「N」と、長さを表す単位「m」を乗じた「N・m」がトルクの単位となります。
トルクの単位の換算方法
トルクの単位が変わると、数値も変わってきます。
「1N・m」=0.10197kgf・m
「1kgf・m」=9.8067N・m となります。
kgf・mをNに変換する時は、10倍(×10)
Nをkgf・mに変換する時は、10で割る(÷10)と覚えておくと、おおよその目安が分かりやすくなります。
締め付けトルクと軸力との関係
締め付けトルクを大きくねじを締めると、ねじの軸力も強くなり、より強固に部材を固定することができますが、締め付けトルクが大きすぎてしまうと軸力が強すぎ、相手部材に損傷を与えたり、ねじが破損する恐れがあります。また、締め付けトルクが小さすぎるとボルトが緩む危険性があります。
このように締め付けトルクと軸力には相関関係があり、適正な軸力で部材を固定するために、それにあった締め付けトルクでボルトを締める必要があります。
この締め付け力を正確に調べるのには軸力計が必要となりますが、トルク値を使った以下の公式で締め付けトルクと締め付け力の目安を計算することができます。
トルク「T」=トルク係数「k」締め付け力「F」ねじの外径「d」
「T」トルク(N・m)
「k」トルク係数( 0.15 から 0.2 が一般的な値)
「F」締め付け力、引っ張り荷重、軸力(N)
「d」ねじの外径(m)
実際に締め付けた時に加わる軸力は、ねじの種類やねじのピッチなどによって変わってきます。これらの要素を考慮したのがトルク係数です。
計算には長さを表す単位をそろえる必要がありますが、どれくらいの締め付けが出来ているのか?どれくらいの長さのレンチがあれば締結できるのか?など、目で見ても分からない締結力を計算することができます。
まとめ
今回は「トルク」について紹介しました。
ねじの種類や、相手部材により、適正な締め付けトルクは変わります。
トルク不足による、ねじやボルトの緩みや、トルクのかけすぎによる部品の破損は、重大事故の発生要因となります。これらを防ぐためにも経験や人の感覚に頼らず、正確なトルク管理が重要です。
参考にしてみてください。