安全在庫とは?明日から実践できる計算方法、維持方法を詳しく解説!

在庫管理

安全在庫とは?明日から実践できる計算方法、維持方法を詳しく解説!

製造業において、在庫が足りなくなる、在庫が余り過ぎてしまうなどの課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
欠品を恐れ、最低限必要な余剰の在庫を多く設定してしまっては、適正な在庫になりません。

そこで今回は、明日から実践できる安全在庫の計算方法、維持方法を詳しくについて解説します。

安全在庫とは?

「安全在庫」とは、欠品を生じさせないために、最低限必要な在庫を維持しておくことです。

安全在庫が確保できないと、

  • 商品や在庫部品に欠品がでる
  • 販売機会を損失する
  • 急激な需要増が生じて、生産が追い付かなくなる
  • 資産を現金化できず、キャッシュフローが悪化するなど

企業の経営に影響を及ぼします。

安全在庫の量が多すぎてしまうと、保管コストが増加してしまい、逆に少なすぎてしまうと、販売の機会損失につながるため、最低限必要な安全在庫を慎重に計算する必要があります。

安全在庫の計算方法

「安全在庫の計算式」

安全在庫 =安全係数(1.65)× 使用量の標準偏差 × √(発注リードタイム+発注間隔)

安全係数とは

「安全係数」とは、注文に対してどれくらいまでの欠品なら許容できるかを表す数値のことです。

まず、どれくらいまでの欠品を受け入れるかを決めておきます。

例えば、100回の発注のうち、5回が欠品になるという確率は5%となり、欠品許容率が5%となります。しかし、この欠品許容率は、安全在庫の計算式にそのまま当てはめることができないため、欠品許容率に基づいた安全係数の数値に変換する必要があります。

「欠品許容率」=安全係数

「0.1%」=3.10

「1.0%」=2.33

「2.0%」=2.06

「5.0%」=1.65

「10%」=1.29

「20%」=0.85

一般的によく使用される安全係数は、欠品許容率5%の1.65とされています。
上記に記載のない欠品許容率は、エクセル関数で算出することができます。

「安全係数のエクセル関数」

安全係数 = NORMSINV(1-欠品許容率)

例えば、求めたい欠品許容率(3%)の場合
セルに、=NORMSINV(1-3%)と入力すると、安全係数が1.89と計算されます。エクセル関数を用いることで、自社にあった安全係数を設定することができます。

使用料の標準偏差とは

「使用料の標準偏差」とは、需要の変動を判断するための数値のことです。
データにどれくらいのばらつきがあるかを、過去の在庫使用数のデータから求めることで、より現実に近い予測をすることが可能となります。
標準偏差は、一定期間の使用量のデータを取ることで、エクセルの関数で簡単に計算できます。

「標準偏差のエクセル関数」

標準偏差 =STDEV(求めたい期間の在庫使用数のデータが入力されたセルを指定)

例えば、在庫使用数のデータが、C2~C12に入力されている場合
セルに、=STDEV(C2:C12)と入力すると、標準僅差が計算されます。

√(発注リードタイム+発注間隔)とは

  • 発注リードタイム

発注リードタイムとは、在庫を発注してから実際に納品されるまでの日数のことです。
例えば、4月1日に発注し、4月6日に商品が納品された場合、発注リードタイムは6日となります。

  • 発注間隔

発注間隔とは、発注した商品を再びを発注するまでの期間のことです。

例えば、4月1日に発注した商品を、定期的に発注している場合、毎週同じ曜日であれば、発注間隔は7日となり、10日ごとであれば、発注間隔は10日となります。
不定期での発注の場合は、発注間隔が0日となります。
この発注リードタイムと発注間隔を足した数値の平方根を求めます。

√(発注リードタイム+発注間隔)は、SQRT関数で算出すると簡単に計算できます。

「平方根√のエクセル関数」

平方根√ =SQRT(正の数値)

例えば、発注リードタイム6日+発注間隔7日=13日で、13の数値が、E2に入力されている場合、セルに、=SQRT(E2)と入力すると、3.605551と計算されます。

計算方法

実際に、次の例で安全在庫を計算してみます。

安全係数:1.65

使用量の標準偏差:10

発注リードタイム:6日

発注間隔:7日

「安全係数(1.65)」×「使用量の標準偏差」× √(発注リードタイム+発注間隔)=安全在庫数

1.65×10×√13=59.4915915

この場合の安全在庫は、約60個となり、欠品を生じさせないために、最低限必要な約60個の在庫を維持しておくと、欠品を防ぐことができるということになります。

 

適正在庫とは?

安全在庫が分かると、適正在庫が算出できるようになります。
「適正在庫」とは、欠品せず、かつ、過剰在庫にもならない適正な在庫数のことです。

安全在庫が、欠品を防ぐ目的で、最低限必要な在庫数を設定することであったのに対し、適正在庫は、企業が利益を出す目的で、最低在庫数から最大在庫数までを設定することです。

欠品を出さないために、在庫を多く抱えることだけを目的としてしまうと、

  • 過剰在庫
  • 在庫管理の効率悪化
  • 在庫商品の品質低下
  • 保管コストの増大
  • 廃棄や返品に費用がかかるなど

利益を圧迫してしまうことにつながります。
在庫数の最小限の数と共に最大数を決め、適正在庫を維持することは、利益を最大化し、キャッシュフローを最適化をする上で重要なことです。

適正在庫の計算方法

「適正在庫の計算式」

適正在庫を算出する計算式は複数ありますが、今回は、基本的な方法である、安全在庫をもとにした計算式をご紹介します。

欠品防止の目的で計算された安全在庫と、発注してから次の発注があるまでに消費された在庫量の半分であるサイクル在庫を組み合わせて適正在庫を算出していきます。

適正在庫 = 安全在庫 + サイクル在庫

  • サイクル在庫

サイクル在庫とは、発注から次の発注までの間に使用する在庫量の半分のことです。

例えば、月に1度(30日周期)、毎月1日に発注する場合、約15日間に消費される在庫量がサイクル在庫となります。

適正在庫の維持方法

適正在庫を維持するためには、「適正在庫の考え方を統一する」「発注方法の見直し」「リードタイムの短縮」「需要予測の精度を上げる」が有効です。

「適正在庫の考え方を統一する」

適正在庫に対する考え方が部門ごとに違っていると、在庫の目的が違っていることが多く、適正在庫を維持できません。部門ごとに考える適正在庫ではなく、企業にとっての最適な在庫の視点で適正在庫に対する考えを決め、部門ごとの考えを共有し、企業一体となり適正在庫を維持することが重要です。

「発注方法の見直し」

自社の商品や人員、コストなどを考慮し、それぞれに合った最適な発注方法に見直し、使い分けることで、適正在庫を維持することが可能となり、在庫管理を効率化することにもつながります。

発注方式には、「定期発注方式」「定量発注方式」の2種類あります。

  • 定期発注方式

定期発注方式とは、毎月1日や週に1度など、一定のサイクルで定期的に発注する方式です。

発注時期は在庫量に影響されないですが、発注量をその都度予測しなくてはならないため手間がかかります。しかし、在庫量や必要数に応じて発注数を決められるため、高価な商品や需要の変動が大きい商品に向いた発注方法です。

「発注量の計算式」

発注量=(発注間隔+調達期間)× 使用予定量 + 安全在庫 – 発注時の在庫量

  • 定量発注方式

定量発注方式とは、基準となる在庫数を決め、その発注点を下回った時点で、あらかじめ決められた量を発注する方式です。

発注量が決まっているので、在庫補充の手間がかからず、在庫管理や発注業務の人件費を削減できます。しかし、常に在庫量をチェックして、発注のタイミングを逃さないようにしなければならず、急な需要などの変化に対応しにくいため、安価な商品や需要の変動が小さい商品に向いた発注方法です。

「発注点の計算式」

発注点=1日平均使用数×発注リードタイム+ 安全在庫

「リードタイムの短縮」

調達リードタイムが長ければ、万が一欠品が発生すると、顧客を待たせてしまい、競合他社の方がリードタイムが短いと乗り換えられてしまうリスクが発生します。また、販売機会損失を恐れ、在庫を多く抱えることにもなりかねません。

調達リードタイムが長い場合

  • 社内改善点の作成
  • 発注計画書の見直し
  • 取引先企業へ改善点を指摘し企業間で調整を図るなど

調達リードタイムを最適化することが大切です。
製造業においては、製造のリードタイムを短縮することも適正在庫の維持につながります。

製造リードタイムが長い場合

  • 人材の増加や再配置
  • 機械や設備の更新
  • 生産計画の見直しなど

作業工程それぞれの生産計画を最適化することが大切です。

「需要予測の精度を上げる」

適正在庫を一度算出しても、市場の動向や需要は目まぐるしく変化しています。

需要予測の精度を上げるために、過去のデータから適正在庫を把握するだけでなく、月ごとの使用実績や販売実績、顧客の動向、最新のトレンドなどを分析し、受注が増減している時期や在庫の過不足発生時期などを把握することが大切です。

AIやシステムを活用し、幅広いデータから、より効果的な需要予測をすることを検討してみるのも一つの手段といえます。

需要予測を正しく行うことができれば、過不足のない適正在庫を維持することが可能となります。新製品の需要予測や、万が一予測が外れた場合も想定し、柔軟な在庫調整ができる仕組みも合わせて構築することが大切です。

まとめ

今回は明日から実践できる安全在庫の計算方法、維持方法について紹介しました。

製造業において、在庫の管理は非常に重要です。原材料や部品数などの膨大なアイテム数があるなか、欠品を防ぎ、在庫を減らしていく適正な管理が求められます。安全在庫を知り、欠品を防ぎつつ、さまざまな要因によって常に変動する適正在庫を維持することが重要です。
ぜひ参考にしてみてください。

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