受発注管理

製造業で受発注システムが導入される理由は競争力強化と業務効率化|デメリット対策は?

受発注システムは、企業間の取引における受発注業務をデジタル化し、効率的に管理するシステムです。小売業だけでなく製造業でも、受発注システムが導入されてきていますが、製造業におけるメリットと導入の背景はなんなのでしょうか?この記事では製造業における受発注システム導入の背景とメリットおよび導入することで生まれるデメリットへの対策を解説します。良い面だけでなくデメリットも認識すれば、システムの導入で競争力強化と業務効率化を実現しやすくなるでしょう。

受発注システムを導入する製造業が増加している

受発注システムは、いまや大手の製造業では当たり前に導入されてきています。

中小の製造業でも、製造業で受発注システムが導入されてきています産業のグローバル化や地球温暖化への対応、コロナ禍や天災などで、サプライチェーンが破壊され、調達対応により効率を求める流れが進んでいます。

受発注システムとは

受発注システムは、企業間の取引で行われる受発注の業務をデジタル化して、効率的に管理するためのソフトウェアやアプリケーションです。やり取りされる情報は、製品の型や仕様、納期、数量、価格などです。

受発注システムの種類

現在各社から販売されている受発注システムは、システムを購入して自社で管理をおこなうオンプレミス型とネット環境に接続して利用するクラウド型にわけられます。両者どちらにも、一長一短があるので導入する企業の事情にあわせて、選定をおこなう必要があるでしょう。

以下に主な特徴を表にまとめました。

項目 オンプレミス型 クラウド型
機能 ・ニーズに合わせてカスタマイズ可能

・ 既存システムと統合しやすい

・ カスタマイズの柔軟性は限定的<・ 他のクラウドサービスと連携できる
初期費用 ハードウェア、ソフトウェアの購入費用

 設置、セットアップ費用

・ 必要な機能に応じた課金体系で初期費用は安い
運用 ・メンテナンス費用が必要

・スタッフによる運用管理

・ 保守、メンテナンス費用は不要

・ ユーザー数や使用量でコースを選ぶ

セキュリティ ・ 自社のセキュリティポリシーに合わせた対策が可能

・外部からのアクセスリスクが低い

・天災の際のデータ紛失リスクあり

・クラウド事業者がセキュリティ対策を実施

・ データは外部に保存され情報漏洩のリスクがある

・ 定期的な監査が必要

・天災があってもデータは保持されやすい

アップデート対応 ・アップデートのタイミングを決められる

・ アップデートに伴うシステム停止時間が発生する可能性がある

– クラウド事業者が定期的にアップデート

・ アップデートによるシステム停止はほとんどない

拡張性 ・ ハードウェアの追加が必要

・コストと時間がかかる

・利用者数や取引量の増加に合わせて柔軟にスケールアップ可能<b・ 短期間で拡張が可能
導入期間 ・ハードウェア調達、設置、セットアップに時間がかかる

・ カスタマイズにも時間を要する

・ すぐに利用開始できる

・- カスタマイズがあれば相応の対応時間が必要になる

受発注システムの主要機能

受発注システムでは受発注にかかわる複数の業務が同時に管理できます。主な機能を解説します。

新規受注管理

新規の情報を登録します。今後の受発注の迅速化のために必要な機能です。これまでの情報をマスタデータ化できれば、登録も簡単なのでおすすめです。

受注管理

受注の内容を入力し、その品目の納期、注文主に届けるまでの進捗や原価までを管理します。主に以下のような機能があります。

  • 工程・納期管理…製品完成までの工程すべてを登録し、使用する機械や担当者、納期を設定
  • 進捗管理…製品の製造状況をリアルタイムで管理し、進捗を確認
  • 原価…作業時間から原価を測定

外注管理

他社で製造し自社で販売する外注品の入出庫や製造状況を管理する機能。外注先の工程を一覧で確認できたり、外注先のトラブルを把握できる機能を搭載している製品もあります。

見積り管理

得意先からの見積や外注先への見積を管理する機能です。

請求支払い管理

請求書や支払情報の作成、送付、入金の確認などを行います。

統計・分析

受発注データを分析し、需要予測や在庫最適化などに活用します。

 

製造業における受発注システム導入の背景

製造業で受発注システムが導入されるのには、主に5つの理由が考えられます。

グローバル化

ビジネスのグローバル化で、どの民族にとってもわかりやすい客観的で分かりやすい情報管理が必要になっています。

環境問題への対応

温暖化などに象徴される地球環境問題も無視できません。モーダルシフトに代表される物流業界の輸送方法の見直しや、期限切れ品の削減などの課題を解決するために、在庫の管理制度の向上が期待されています。

コロナ禍や天災によるサプライチェーンの混乱

コロナ禍による混乱で、企業体質を強化し、生き残りやすい体制をつくるうごきがかそくしています。

また、天災や戦争などでサプライチェーンが寸断され、原料や部品が思ったように入手できない状況も発生しています。在庫を明確に把握し、別の業者から入手する場合の原価や利益などを、できるだけ早く把握し対応することが企業の生き残りにつながる時代となっています。

人員不足

トラック運転手の労働時間規制により、実質的な人員不足が起きています。また、就職先に製造業を選ぶ若者が増え先細りのムードがあり、今後経験に基づいた受発注作業ができる人を確保するのがむずかしくなるといわれています。今後は、スキル伝承に時間のかからないマニュアル化されたシステムが求められています。

品質保証の高度化

品質の考え方が高度化し、製品がいつどこで誰によって、何を材料に作られたかを明確化するトレーサビリティの考え方が浸透してきました。受発注システムを使えば製品のデータが紐づけしやすく、信頼性が向上します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速

いまや世の中がデジタル化し、電子決済も当たり前になりました。製品の情報が明確化する受発注システムを導入しなければ、データ化された商品取引から取り残される危険もあります。

受発注システム導入のメリット

受発注システムは小売販売業だけでなく、製造業にとっても「役に立つ」システムです。主なメリットを紹介します。

1. 効率の向上・スピード化

受発注システムは、手作業の受発注業務を自動化します。従来、受発注作業はデータの入力や確認、伝票発行に加え、電話やFAXなど、人間が手間をかける作業でした。繰り返し入力の自動化や伝票の自動作成など、受発注システム化の導入によって作業が簡素化されれば、人的ミスの発生する頻度を減らし業務効率が向上します。
また、受発注システムから得られるデータを分析すれば、需要予測や販売戦略がたてやすく意思決定も早くなるでしょう。

2. リードタイムの短縮

受注から発注、納品までの一連の流れをシステム上で管理すれば、各工程の進捗状況をリアルタイムで把握できます。生産の遅延やトラブルなどに早期対応できるので、納期の遅れが少なくなるでしょう。結果的に、リードタイムが短縮しやすくなります。

3. 在庫の最適化

受発注システムと在庫管理システムを連携させれば、製品の在庫状況がはっきりします。季節的な変化が多い製品などが足りなくなったり、在庫を持ちすぎて他の倉庫を借りるなどの在庫に関するリスクも減らしやすいでしょう。過剰在庫や欠品などのリスクが減り、在庫を最適化しやすくなります。
在庫の適正管理は生産性と収益性に直結する重要な要素です。在庫管理の最適化は、製造業の競争力を強化します。

4. サプライチェーンの可視化

受発注システムを導入することで、サプライチェーン全体の可視化が実現します。原材料の調達から製品の納品までの一連の流れを可視化することで、ボトルネックの特定や改善点の発見が容易になります。また、トレーサビリティの向上にも寄与し、問題発生時の原因究明や対策立案がスムーズに行えます。

  1. 取引先とのコミュニケーション強化

受発注システムを介して、取引先とのコミュニケーションを円滑に行えます。Web上で受発注情報を共有することで、電話やメールでのやり取りを減らせます。また、取引先との情報共有や連携も強化でき、パートナーシップの構築にも役立ちます。

受発注システム導入のデメリットとその対策

受発注システム導入のデメリット

受発注システムを導入すれば多くのメリットがありますが、デメリットもあります。導入前には、いいところばかりに目がいきがちですが、システム化がうまくいくためにはデメリットも把握し対応する必要があります。

1.初期投資が必要

受発注システムの導入には、多かれ少なかれ初期投資が必要です。とくにシステムを購入するオンプレミス型のシステムでは、ソフトの費用が必要になります。

クラウド型のシステムを導入する場合も、サーバーを用意しバーコードリーダーや端末などを用意する場合が多いでしょう。またシステムの内容が、自社にあわない場合カスタマイズの費用が必要です。

2.運用コストが発生する

クラウド型を選択した場合、定期的な利用料が必要になります。これにはデータのシステムの維持・管理、アップデート、トラブル対応などにかかる費用が含まれています。

システムを購入するオンプレミス型を選択した場合にも、大きなシステムアップデートの際には費用が発生しますし、管理する担当者の人件費も必要です。

3.従業員の抵抗や不安で業務の能率がさがる

新しいシステムの導入は、業務の変更を伴います。慣れた仕事を変えられるのに、抵抗をもつ社員もいるでしょう。よくわからないという理由で不安を感じる場合も多いものです。

4.取引先とシステムが合わない

受発注システムが、取引先がシステムに対応していない場合、データの連携ができなくなります。インプットしたのに台帳に記載しなければならない二重の作業が発生する場合には、いままでより作業性が低下するリスクもあります。

5.セキュリティ上のリスクが発生する

受発注には、会社の根幹をなす重要な取引情報が蓄積されます。システムが脆弱で不正アクセスを受けたり、誰でもが情報にアクセスできる状態になっていると、情報漏洩や改ざんなどのセキュリティ事故が発生するかもしれません。

6.トラブルの際に業務が停止する

すべてを受発注システムに依存してしまうと、システム障害の発生時にすると業務が停止してしまう可能性があります。

2023年に金融庁が公表している「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」によると、2022 年4月から 2023 年3月の間に金融庁に金融機関から報告されたシステム障害の件数は約1900件にのぼりました。つまり金融機関では、どこかで1日に5件以上のシステム障害が起きている計算になります。製造業についてもトラブルの発生はあると思っておいた方がいいでしょう。

 

デメリット回避に効果的な方法は?

プランごとの支出金額を想定し比較する

受発注システムを導入する際には、オンプレミス型とクラウド型それぞれのプランごとに、初期費用や運用費用を含めた中長期的な支出金額を想定し比較すべきです。

比較することが重要です。オンプレミス型では、ハードウェアやソフトウェアの購入、設置、メンテナンスなどに多額の費用がかかる一方、クラウド型では、初期費用が抑えられる代わりに、ユーザー数や使用量に応じた定期的な支出が発生します。

どちらが、自社に向いているかは受発注の規模や範囲、社員のメディアリテラシーや今後のビジネスの成長予測などによって違うでしょう。自社に最適なシステムを選ぶのは、最も大切なデメリット回避策です。

教育システムを策定する

受発注システムを使うのは人間です。ユーザーである従業員に教育を実施すれば、拒否感や立ち上げ時のトラブルの低減につながります。

オンプレミス型、クラウド型にかかわらず、システム導入前に十分な時間を確保し、従業員のスキルレベルに合わせた教育を実施しましょう。マニュアルの作成や、OJTなども必要になります。

また、定期的な再教育のシステムも必要です。システムのアップデートや新機能の追加のタイミングで、定期的な研修を行うのもいいでしょう。使用しているうちに曖昧になっていることや、普段から抱いている疑問点をはっきりさせれば、よりスキルアップが可能になります。

シミュレーションを実施する

本格的な受発注システムの導入前に、運用シミュレーションを実施しましょう。、潜在的な問題点や課題を事前に特定し、解決策を考えておけば実運用の不安が少なくなるでしょう。

シミュレーションでは、受発注プロセスの各段階における操作性、処理速度、エラー発生率などを検証します。ダミーデータを用いてテストを行い、システムの性能や機能が自社の業務要件を満たしているか確認したり、外注先との整合性も確かめておきましょう。

セキュリティ体制を再確認する

オンプレミス型出会ってもクラウド型であっても、セキュリティ体制についてはシステム前に必ず確認が必要です。特に受発注は自社だけでなく他の業者も関わりますからセキュリティ体制は他者への配慮でもあります。

クラウド事業者のセキュリティ対策の提出を依頼し、自社の要件を満たしているかどうか確認します。

参考までに、下記に一般的な受発注システムのセキュリティチェックリストを紹介します。

分類 チェック項目
アクセス制御 ユーザーアクセスは適切に管理されているか
強力なパスワードポリシーが設定されているか
定期的にユーザーアクセス権限の見直しが行われているか
二要素認証が導入されているか
ネットワーク

セキュリティ

ファイアウォールが適切に設定されているか
不要なポートが閉じられているか
VPN(仮想プライベートネットワーク)が使用されているか
定期的にネットワーク脆弱性スキャンが実施されているか
データ暗号化 重要なデータは暗号化されているか
暗号化キーの管理は適切に行われているか
暗号化アルゴリズムは安全性の高いものが使用されているか
ログ管理 システムへのアクセスログが記録されているか
ログの定期的なレビューが行われているか
異常なアクティビティを検知するためのアラートが設定されているか
パッチ管理 オペレーティングシステムやソフトウェアの最新セキュリティパッチが適用されているか
定期的にパッチ適用状況の確認が行われているか
物理的セキュリティ サーバーやネットワーク機器への物理的アクセスが制限されているか
データセンターやサーバールームの入退室管理が適切に行われているか
人的セキュリティ 従業員教育
委託先との間で守秘義務契約が締結されているか
委託先のアクセス権限は必要最小限に設定されているか
ヒヤリハット事例対応 セキュリティのヒヤリハット発生時の対応計画が整備されているか 
定期的に訓練や危険予知活動が実施されているか
発生したヒヤリハットの対応策がとられているか?

 

受発注システムで導入し競争力強化と業務効率化を実現

受発注システムは、製造業でも導入が当たり前になっています。システムの導入には、業務効率化、リードタイム短縮、在庫最適化などのメリットがある一方、初期投資、運用コスト、従業員の抵抗、セキュリティリスクなどのデメリットも存在します。

ですが、導入の際にデメリットと向き合い、その回避策をとれば競争力強化と業務効率化を実現できるでしょう。

クラウド型生産管理システム「鉄人くん」は、製造業に特化したクラウド型の生産・販売管理システムです。製造業専門ならではの、システム設計で受発注もこなします。製造業で受発注システムを導入する際には、ぜひ「鉄人くん」も選択肢に加えてください。

この記事が、受発注システムを検討する際の一助となり、製造業の皆様の業務改善に役立つことを願っています。

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